第23話 帰路
クラスのホームルームは理解が追いつく前に終わり、気がつけばお昼で解散になった。
これから敷地内の寮に戻る人も居れば、自宅に帰る人も居る。
寄り道なんかは配られた生徒手帳記載の校則によると禁止らしく、制服を着てる間は桜花の生徒足り得る振る舞いを心掛ける様にとある。
クラスの皆さんも例に漏れず、話を聞く限り一度部屋や家に帰ってから出直そうと言った話題が交わされている。
そんな事を思い出しながら揺られる車の中……。
女の子になっても相変わらず友達を作るのは苦手だと感じた。
と、言うより話していた話題に追いつけなかったので遠慮しただけ…。
これから関係を築けばいいのだ、決してこれはハブられたわけじゃ無い…。
多分。
「はぁ……」
思わずため息が漏れる。
果たして明日から上手くやって行けるのだろうか…
「どうかなさいましたか?」
運転手の日下部さんがそんな姿の私を気にかけて声をかけてくれた。
先日、私の専属運転手になった日下部さん、総一郎さんの執事、
ここ数日外出が続いたので、話すようになった。
「いえ、久しぶりの学校だったので少し気疲れというか…」
「作用でございましたか、確かに桜花の雰囲気は私も苦手でした。」
「弥生さんも桜花だったんですか?」
「ご存知の通り父がああいった立場の人間ですから幼稚園から桜花だったんですよ。けれどあの独特な緊張感が水面下でゆらめいている雰囲気は苦手です。」
それにはなんとなく共感が得られた。
話しかけられている時、周りが話をしている時。
ある種『派閥』と形容出来るグループが形成されていた様にも思える。
「はぁ……」
「大丈夫ですよ、一ヶ月も経てばあの雰囲気の中でも麻琴さんは上手くやっていけますよ」
「そうだといいんですけどね…」
一抹どころか大さじ5杯位の不安を感じながら車に揺られる。
ぼーっと車窓を眺めているとあっという間に家に着いた。
「お待たせしました。お疲れ様です。」
「ありがとうございます、弥生さんも運転お疲れ様です」
車を降りて家に入ると美紀さん一人が出迎えてくれた。
「おかえなさいませ、麻琴ちゃん」
「ただいま戻りました。」
時間は3時を回っていてちょうどハウスの皆さんもパーラーの皆さんも忙しい時間だった。
「すぐ着替えて持ち場行きますね」
「いや、きょ、今日は麻琴ちゃん疲れてるだろうし、お休みでいいよって洲崎さんが…」
「……そうなんですか?でも、やる事は沢山ありますよね…?」
「だっ、大丈夫、大丈夫ッ!今日から麻琴ちゃんの本業は学生なんだからっ!」
「でも、私この後何も予定無いですし、何かあればやりますけど…」
「本当に、本当に大丈夫!さ、さぁ!お姉さんと一緒にお部屋に行きましょうねぇ!」
いつもと様子が明らかにおかしい美紀さんが、私の手を割と強引に引き、寮の方に連れて行かれる。
私はこの時、佐久間家で起こっている事に気が付きもしなかった。
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