第22話 2年C組


 コツコツと入学準備をしつつメイドの仕事をしていたら、あっという間に4月を迎えた。

そう、今日からいよいよ桜花学園の生徒として通うことになる。

 大講堂の後方で先生方と並んで始業式に参加する。

高等部の校長先生の話しを聞き、その後東堂学園長のお話があり、各クラスに解散となる。

クラス替えなどは初等部から中等部、高等部に上がる段階でするらしく、高等部ではもう無いらしい。

 私が入るのは2年C組、担任の山下あかり先生と共に教室に向かう。

「それでは、直ぐ声をかけるので、廊下で少し待っててください」

先生はそう言って教室に入る。

「起立、気をつけ、礼、着席」

「はい、それでは朝のホームルーム始めます。今日から皆さんは高等部の2年次です。それぞれ進路などを決めていく大切な年になるので気を引き締めていきましょう。そして、今日から皆さんに新しい学友ができます。真壁さん、どうぞ。」

 廊下で緊張して立っていると声がかかる。

 意を決して教室のドアを開けて入室する。

 壇上の先生の隣に立ちクラスを見渡す。

 30人ほどの視線が一気に私に向く、緊張で吐きそう…

 先生は黒板に私の名前を書いて紹介する。

「真壁麻琴さんです。真壁さんは高等部からの編入になりますので、いろいろわからない事が多いと思います。なので困っていそうでしたら積極的に助けてあげてください。真壁さん、何か一言お願いします。」

先生はそう言って私に促す。

「えっと…真壁麻琴です。よろしくお願いします」

 やっとの思いで振り絞った言葉とお辞儀は、なんの変哲もない至って普通などこへでも通用する様なものだった。が、教室の皆さんは拍手で一応の歓迎の意を示してくれた。

「それでは席は…中川なかがわの隣が空いているのでそこで。」

 指示された席は廊下側の列の最後尾。

左隣にはナカガワさん?が居る。

ナカガワさんは愛嬌のある笑みを浮かべ私に微笑んだ。

着席すると先生が話し始める。

「それでは、まず学級委員を決めるけれど…一年の時は安藤あんどう竹下たけしたがやっていたよな?続きで頼めるか?」

「「はい、わかりました」」

名指しされた2人はもちろんですともと言わんばかりに返事をする。

先生の話がほぼ理解できない内にホームルームが終わり中休憩になる。

そして私は転入生によくあるであろう質問攻めに合っていた。

「前の学校はどんなだった?」


「家から来てるの?それとも寮?」

「ねぇ!バスケ部入らない?」

「是非!バレー部に!」

四方八方から声が掛かり聞き取れる物だけでも多種多様だ。

 お坊ちゃん/お嬢様学校って言うからもっと排他的な雰囲気を想像していたのだが、思った以上に普通な高校で、すこし拍子抜けした。

どこの学校に行っても転入生への対応は同じの様だ。

皆んな人当たりがよく、社交的でなんとなくここなら平穏に過ごせるのではないだろうかと感じた。




 

 

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