第18話 入学前準備

 3月も下旬に差し掛かり、そろそろ早い品種で桜がチラホラ咲き始めた。

だんだんと暖かくなる陽気とは裏腹に祥太郎さん達は会社の決算などで忙しくしている。

 かく言う私も先日面談と編入試験をした桜花学園から正式に入学許可が出て、その準備に追われていた。

 そう、不安だった編入試験に合格して、この春から桜花学園に通学することが決まったのだ。

ぶっちゃけ数学と理科が激ヤバだったのでヒヤヒヤしたが、ギリギリ合格点で心臓に悪かったりした。


 入学式が4月1日、始業式は3日に行われるそうだ。

今日は春休み真っ只中の学園に制服を合わせに来ていた。

一応保護者なので総一郎さんも仕事を空けて来てくれている。


 紺のブレザーは共通だが、その他のワイシャツやブラウス、ネクタイかリボン、スカート、スラックスは各々おのおの自由に組み合わせて着用出来る。

昨今の事情の流れっていうのを感じた。

しかし、流石お坊ちゃん/お嬢様学校なだけあって、制服に気合いが入っている。

ブレザーとワイシャツ、ブラウスの左胸のポケットには桜の花を思わせる校章の刺繍がされていてさりげないワンポイントがおしゃれだ。

ネクタイ、リボンはいわゆる学年カラーとして各学年、初等部、中等部、高等部でデザインが違うらしい。

私が入る高等部の2年次はオレンジに白と紺のストライプのネクタイ、リボンで社会人でも使えそうなシックなデザインになっている。


どの組み合わせにしようか…と思考回路をぐるぐるさせていたら見かねた総一郎さんは

「とりあえず2着ずつ貰って行けば足りるかい?それなら迷う必要ないだろう。」

そう言い放った。

「へっ…??」

全く考えていなかったことを言われて目を丸くして総一郎さんの顔を凝視する。

「いやいやいや!?ちょっと待ってください!そんなにブレザーあっても困りますよ!?」

5秒くらい間を置いて私はいさめた。

「2年通うし、着るんだからそのくらいあってもいいだろう。」

「ブレザーとスラックスあと小物類は一着でいいかと……ブラウスとスカートは2着欲しいです…」

半年間、問答無用でスカートで生活しているとね、慣れてむしろ楽なんですよスカート。


 とりあえず無事?購入枚数も決まり、試着に入る。

一体1着いくらするのか不安になる程作りのいい制服を着ていく。

スカートはひだひだが多くてかわいい。

ひだが少なめのゆるふわなスカートの方が個人的に着心地良くて好みだけど、制服のスカートといえば生地が硬めでひだが多いタイプが可愛いよね。


 試着が終わり総一郎さんと藤堂学園長に見せる。

「よくお似合いですよ、サイズも良さそうね。」

学園長はそう言って微笑む。


 学園を後にして帰路に着く。

と、言っても総一郎さんと後部座席に座っているだけだけど…

佐久間家の皆さんはトEタ車がお好きらしく、今乗ってるレクセスのESって車のハイグレードモデルだそう、祥太郎さんが使ってるのはクロウンだし……。

流石、高級車ってだけあって乗り心地最高。

乗り物酔いしにくいっていうのがいい。

セダンタイプしか勝たん。

隣に座っている総一郎さんは電話やら仕事の対応をしていて、私は普通に暇を持て余し窓の外をずっと見ている。


 心地よい温度に静かな走行音。

気がつけば私は夢の国に旅立っていた。




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