第12話 ルームメイト

 保科さんに招かれて、私は部屋に入る。

少し広めのワンルームの部屋には二段ベッドと机が二組、それにウォークインクローゼット。

お風呂は1階の大浴場があり、トイレも各階一箇所づつあり共有スペースになっている。


「ベッドは上でいい?あたし今下を使ってるから…もし嫌だったらあたしが上になるよ?」

「えーっと…。二段ベッドって始めてで…分からないからとりあえず上で大丈夫です…」

「りょーかーい…てか、そんなに畏まらなくていいよ?これから一緒の部屋なんだし!気楽に美紀みきって読んでよ!」

「そう…ですよね。じゃあ、美紀さんこれからよろしくお願いします。」


 それから美紀さんと自己紹介をし合った。

美紀さんはパーラーメイドでオレンジのタイをしている。

パーラーは基本的には来客対応とバーのお酒だとかの管理がメインだけれど、作業量は多くはないのでハウスの仕事も一部受け持っているらしい。


洲崎さんは美紀さんにバトンタッチして事務室に戻り、美紀さんが補足で色々教えてくれた。

例えば、ゴミの出し方だとか、入浴時間だとか、その他色々…。

そんな些細なことだったけどこれから重要になってくることばかりだった。


 気がつけばあっという間に夕方で、

そろそろ3人が帰宅する時刻らしく、ハウスメイドは玄関に集合する、

お出迎えだ。

なるほど、昨日の光景はこうして作られていたのかと感心する。


 一番早く帰宅したのは奥様だった。

挨拶をしたら、真っ先に奥様のカバンやコートを受け取り、自室にエスコートするメイドがいる。

着けている藤色のリボンタイは教えてもらっていない。

後で教えてもらおう、と考えていたら

次は旦那様がご帰宅なされた。

同じ藤色のリボンタイのメイドに荷物を預けて、奥様と同じように部屋に向かう。


 それから暫くして、祥太郎さんが帰ってきた。

周りとタイミングを合わせながらぎこちなく挨拶をすると真っ先に私に近づいてきた。

「ただいま、麻琴さん。やっぱり、君は何を着ていても似合うね。とても素敵だよ。」

「えっ…な…あ、ありがとうございます…」

 突沸したように顔が熱くなる!

さっきまで普通に話せていたのに彼に見つめられると途端に言葉が出てこない…

 もじもじしている私の左手を取り、祥太郎さんは手の甲にキスをしてから微笑んで、彼は自室に向かう。

 思考回路がショートした…


周りの黄色い声もなんだか遠く聞こえる…



 脳が処理しきれない情報に耐えかねて、脳がシャットダウンする。


 私は気絶した……

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