第11話 Make my life

 三人を送り出してから私は昨日から私に付いているメイドさんに案内され、使用人寮の事務室に来ていた。

「はじめまして、わたくしは当家の家政婦をしております。洲崎麻子すざきあさこと申します。本日からよろしくおねがいしますね相川麻琴さん。」

「こ、こちらこそよろしくおねがいします!相川麻琴と申します!」

「早速ですが、相川さんにはこちらのメイド服を着用して頂き、その後当家屋敷の案内と見学をしていただきます。」


 メイド服のフィッティングと着替をした。

デザインはくるぶし丈で紺無地の襟付きワンピースに白いエプロン、ヘッドキャップ。

クラシカルスタイルとヴィクトリアスタイルを足して2で割ったような感じだ。

かわいい。


 着替えが終わり、いよいよ館内見学だ。

使用人寮から屋敷は屋外廊下で繋がっていて、屋敷には裏口に当たるところから中に入る。


 裏口にも玄関があり、正面のような大きいものではなく、こちらは一般家庭のような佇まいだ。とはいえ、一般的より若干大きいと思う。

ここは使用人用の玄関らしい。


 屋敷はシンプルな長方形の3階建て。

1階は中央にそこだけで一般的なリビング程の大きさの玄関が2階まで吹き抜けになっていて、左右に2階への階段があり、その手前から廊下が伸びている。

 1階は基本的に厨房や、ダイニング、応接室等が集まっている。

 2階はリビング、バー、浴室といった団欒の場所が纏まっている。

 3階は総一朗さん、美津子さん、祥太郎さん達の部屋がある。


 見学が一通り終わり、使用人宿舎の事務室に戻ってくると今度は宿舎の使い方や屋敷のルール、使用人の所属などの座学が始まる。

「まず、始めに相川さんは祥太郎様との婚約が旦那様から正式な許可が出ている婚約者ではありますが、相川さんが高校を卒業するまでの間の約2年間は私共と同じ使用人としての扱いをさせていただきます。これは旦那様の指示でございますのでご了承ください。」

洲崎さんはそう言って説明を始めた。


 この屋敷の使用人はそれぞれ仕事が決まっていて

 

 主に洗濯、アイロンがけ、衣類の管理等を行うランドリーメイドが5人


 主にコックの手伝い等厨房周りの仕事をするキッチンメイドが5人


 主に掃除や消耗品の管理、ベッドメイク、主人の着替えの支度、買い物など家を運営するにあたっての雑務をこなすハウスメイドが7人


 主に客人の相手やバーを管理をするパーラーメイドが3人


総勢20人でこの屋敷を運営しているらしい。

その他にも、庭師や旦那様や奥様、祥太郎さんの執事や側付きが居たりと結構な大所帯だ。


 屋敷の中だけでも人数がいるので、それぞれ誰がどのメイドなのか一目で分かるようにキッチンメイド以外はリボンタイで色分けがされている。


 リボンタイはそれぞれ

 ランドリーが水色

 ハウスが赤

 パーラーがオレンジ


キッチンはエプロンが異なっており割烹着になっていて、そもそも厨房から基本的に移動などはあまりしないらしい。


 家政婦の洲崎さんはこれらを纏める使用人の長であり、ワンピースのデザインから違っていて、リボンタイもスカーフになっている。


 座学が一段落すると

「さて、相川さんにはハウスメイドをしてもらいます。」

そう言って洲崎さんは私に赤いリボンタイを渡してきた。

「わかりました。頑張ります」

受け取った私はタイを着ける。

少し身が引き締まる気がした。


 その後、宿舎の食堂で昼食と休憩を取る。

昼食の時間は各役職にて時間が決まっていてハウスメイドは12時から13時の間で取ることになっている。

 昼食はサンドイッチとコンソメスープ、ミニサラダ。

特に大ぶりのカツを挟んだカツサンドは食べごたえバツグンで美味しかった。

 お昼休みが終わると今日から生活する部屋に案内された。

2階の奥の角部屋、そこが私の部屋になるらしい。

 部屋に着くと同部屋の人が出迎えてくれた。

「こんにちは。今朝ぶりだね、はじめまして、あたしは保科美紀ほしなみき。今日から同じ部屋だからよろしくね!相川さんっ!」

「はじめまして、相川麻琴です。今日からよろしくお願いします」

 出迎えてくれた彼女は今朝まで私の相手をしていた人だった。

 私より少し年上だろうか?そんなふうに見える保科さんは元気な笑顔を

私に向けた。

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