侵入
広い廊下に足音が響き、物凄い勢いで移動していく二つの影があった。
まるで、どこに何があるのか完璧に把握しているかのように迷うこと無く、ただただ目的地に向かって走り続ける。
「ハァ、ハァ……水津巴まだか?」
「はぁ、はぁ……もう少しで着くと思う」
「分かった、速度を上げよう」
そう言った直後、前方にマスクをつけた者たちが現れるが、二人に敵うものはいなかった。
二人とも戦闘訓練を受けていたことや、能力を持っている事もあり、二人を排除しようと現れるマスクをつけた者たちを一瞬で蹴散らしながら駆けて行く。
現在は被害者のいる研究棟に向かっている。
そこについた後は、施設を潰す役と被害者を逃す役、二手に分かれてそれぞれの任務を遂行する。最も危険なのは施設を潰す、もといこの施設のトップを殺すことであり、その役割は水津巴が引き受けた。
正直に言うと俺がその役割を担うと思っていたが、俺がここに居たのはかなり昔のことで、つい最近までこの施設に居てかなり闘い慣れしている水津巴に頼んだわけだ。
不安が無いわけではない。お互い一人になった瞬間アッサリ殺されてしまうかもしれない。しかし、これは誰かがやらなくてはいけないことで、その誰かがたまたま俺たちだったって事だけなのだ。
そろそろ研究棟に着く頃だろう。厳重な扉が見えてくる。その扉を俺は熱を操作し、爆発させるのではなく気付かれないように溶かしていき、人が通れるくらいの穴を開け、直後に侵入し次々に中で警戒している者たちを倒していく。
そして、大勢の被害者を見つけた。
「多いな」
「いや、これでもかなり少なくなった方だよ」
予想では多くても50人程度だと思っていたが、実際はその倍の100人以上が攫われてきていた。
「やっぱりもうボクの知ってる人は居ないらしい」
そんな事を悲しげな表情で呟いた。
そして、俺は声を荒げる。
「出たい奴だけ着いてこい!来ないやつは知らん!」
そう言うとゾロゾロと首に黒いチョーカーを取り付けた全ての人間が着いてきた。
「アレは爆弾だね。何とかなりそう?」
「任せろ」
熱を操作し、爆発しないよう起爆するための回路を焼き切っていく。
そして、解除を確認した彼女は今来たのとは逆方向に駆けていった。
「後はよろしくね」
「そっちこそ頼んだ」
そんな言葉を交わし、それぞれ自分の役割りを全うするために動き出すのだった。
そして、俺は予想外の事態に出交わす。
それは……道に迷った。
そんで散々悩んだ結果諦めて、適当に進むことにした。
組織の被害者たちは途中で見つけた人の気配が全くしない部屋に隠してきたため大丈夫だと思いたい。
そんなこんなで必死に出口を探しているといかにも厳重そうな扉の前に着き、能力でこじ開けようとすると、誰かの声が聞こえてきた。
声がした方へ振り向くと、水津巴が血相を変え、猛ダッシュでこっちに向かって来ていた。
「キミ!なんでここにいるのさ!」
「簡単に言うと、道に迷った」
「来た道を戻ればいいだろ!?」
「行きと帰りだと、風景が変わって分からなくなった」
「ハァ〜〜、それはもうしょうがないとして、被害者たちは?」
「それなら途中、隠して来たから問題ない」
「キミがここにいる時点で問題しかないんだけど……まあ仕方ないか」
「じゃあ、行くか」
「先に聞いとくけど、キミここが何処かわかってるのかい?」
「いいや?」
「だと思ったよ……ここはねこの施設のトップがいる部屋なんだよ」
「マジか……まあ来ちまったもんはしょうがない。とっとと行って、とっとと終わらせよう」
「そんな軽いノリで……」
「気負っててもしかないだろ」
「それもそうだね。行こうか」
「おう!」
そうして扉をこじ開けた先にいたのは……
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