組織
「……ふぅ、じゃあまずボクが『犯罪者』って言ったところに戻すけど」
「やっぱり解らん。なんでお前が『犯罪者』なんだ?」
「そっか、そうだね。まずはボクが『犯罪者』となった経緯を話そうか……キミって、犯罪組織ディスパーションって聞いたことってあるかい?」
「名前だけは」
「じゃあまずはこの組織の事から話そうか……この組織は元々今から約100年前に設立された麻薬カルテルで、麻薬とあるけれど売買したもので多いのが麻薬ってだけで実際はもっと別のものを売買していたんだ。例えば武器とかね。
それで莫大な金額が組織の懐に入り、その金で戦闘技術を鍛える為の特殊部隊式基地やより多くの武器を生産する為の工場なんかを作り上げ、一時期は大国が保有するのと変わらないくらいの軍事力を持っていたんだ」
「でもそれだと他の国が黙ってないだろ?」
「その通り、その組織の周辺国だけでなく多くの国がこの組織を潰すために動き出した。もちろんこの国もね」
「それならすぐに潰されそうだし安心だな」
こいつも組織と関わっていたのはその頃だろう。
「でも実際にそうはならなかった」
「何故だ?」
「各国が動き出したを察知した組織は誘拐や殺人など過激な活動が増えて行った」
「国への牽制か」
「それもあるんだけど、彼らは攫ってきた人々を使って人体実験を行ったんだ」
「それって何の実験だ?」
「……キミってずかずか来るよね」
「話な腰を折るな」
「……人々に行った実験、それは……能力者を造ろうとするものだよ。世の中にいるだろ?透視ができたり、何でも食べれたりする人が。でも組織が造ろうとしたのはそんなちっぽけな物じゃない。物を壊したり直したりする強力なものだよ。……でもそれは失敗に終わった。研究は上手く行っていたんだ、でも組織の中に裏切り者がいた。その者の手によって組織はあっさり潰されてしまった。でも……」
「そうはならなかった」
「その通り、よく分かったね」
「そんな組織がおいそれと潰れる訳がない」
「そうだよ。組織はワザと潰されたように見せて各国に分散させた。そしてこの国にも組織の施設はある」
「じゃあ、まさか……」
「そうキミが考える通り、ボクはこの国にある施設の者に親を殺され誘拐された一人ってことだね。そして、ボクが攫われて時にはすでに能力者を造ること自体は完成していた」
そう言いながら、彼女はポケットから赤い液体の入った試験管の様な物を取り出して机に置いた。
「これは?」
「これは能力者を造り出すための薬。ようはこれを飲むだけで能力が得られるってこと」
「は?言ってる意味が解らない」
「つまり、これを飲むだけで能力を得ることができるまで研究が進んでたってこと」
「おい、それってつまり」
「うん、能力者が造り放題ってことだね。でも、拒否反応が少しでもあるとその人は絶命してしまう。確率的には1%ぐらいだね。そして、ボクはその壁を越えることがが出来た」
「どんな能力なんだ?」
「そうだね、言うなれば共感覚って言ったところだね。人のオーラが見えるのはこの力のお陰ってところだね。それにこの薬には副作用がある」
「それがそのアルビノってことか?」
「そう言うこと。この副作用にも色々あって、髪の色が変わったり、視力が落ちたり上がったり、本当に色々あるんだ。ボクのは運が悪かっただけってこと」
「……ん?おい、今『髪の色が変わるって言ったか?」
「あぁ〜〜、キミの髪のことだね。すまないがそれはボクにも解らないんだ。ボクの共感覚は人のオーラは見えても本当の力は親しい人にしか効果がないんだ」
「んで、その効果ってのはなんだ?」
「親しい人にならある程度離れてても視界を共有できたり、身体に起こった変化を相手にも与えられたり、思考がお互い解ったりだね」
「だから出会ったばかりだった私は、その力の適用外だから解らないと言う訳か」
「まあそんな能力のせいで組織に処分されそうなところをたまたま転がっていた薬を拾いつつ命かながら逃げてきた訳だね」
「で、その逃げた先に居たのが私と言う訳だな」
だから家もとい組織に帰ることできなかったのか。
それに彼女が自分自身の事を『犯罪者』と言っていた理由が少し解った。このような過激な組織だ。攫われて無理矢理能力を与えられたとしても、親がいなければ不穏分子として殺される可能性があるからだ。このような事は基本的に世間には伝わらない様になっている。
事件の被害者にも関わらず淘汰され世間から消されてしまう者がいると知った時にはこの世界は腐りきっていると思ったものだ。少しだけこのような組織に共感できてしまう。まあ入ろうとは思わないけどな。
そんな事を考えると、話し終えてからずっと黙っていた彼女が意を決したように口を開いた。
「よしっ、決めた。今からこの国にある施設をぶっ潰す」
……なんて、馬鹿げた宣言をするのであった。
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