異常

 ボクが茲炉のうちに居候し始めてから、すでに2週間が経っていた。

 ボクは今の生活が好きだ。今までの人生で最高の一時と言っても過言ではないかもしれない。それに、

 毎日おかえりと言ってあげられるのは、とても平和で幸せなこと。だから、所帯を持つということは毎日が幸せで溢れているのかもしれない。

 今の暮らしをしていると、幸せに上限はないという言葉もよく分かる。

 だが、その幸せを得るには引き換えに成長を捨てているとも言える。

 つまり、温情や優しさ、甘さなどの人に幸せを呼ぶだけに溢れかえった生活は人を堕落させ、成長することが出来なくなってしまう。

 そして、人と言うのは一度味わってしまうと無意識にその蜜のように甘く、優しい幸せを追い求めてしまう。

 だから、大人になり所帯を持つ人間はもうそこから成長することが出来なくなってしまう。

 たまに、大切な人やものを失うなどの不幸に見舞われ、再び成長し出す者もいるだろうが、それは幸せを追い求め成長しているため、求めていた幸せを手に入れたら再び成長を止めてしまう。

 つまり、成長を止めるために成長していると言っても過言ではない。

 だからボクは人生のパートナーを得ることがないだろうし、もし得るとしてもそれはボクがだろう。

 それに彼とパートナーになることはないだろう。

 彼は異常だ。きっと普段生活している一面を見るだけなら何処にでもいるような少年だ。一人称などは少し変わっているけれど。

 ボクは人のオーラが見えるためその人の感情の起伏が判るのだが、彼には一切の起伏が見られない。周りからは驚いたり、怒ったりしたように見えるのだろうが、その実、感情そのものは全く変化していないのだ。

 つまり、彼は周りから怪しまれないようにリアクションを取っているが、実際はなにも感じていないのだ。

 だが、彼が一度だけ本当の意味で感情を表に出したことがあった。

 それは、ボクが彼の家について行った時だ。顔はよく見えなかったが、少しだけオーラの色が濃くなったのだ。

 それはきっと、ボクを家に招けば『何か変わるかもしれない』という好奇心からくるものだろう。

 人は誰しも刺激を求めているものだ。彼も例に溺れず、そうだったのだろう。

 だからボクは、彼を『被害者』に選び、刺激を与えてやろうと思ったのだ。

 彼はまだ気づいていないだろうが、ボクを家に招いた時点で彼は『被害者』になっていた。


 だから、ボクはキミに…………キミはボクに…………たんだ。


 そして、翌日ボクは彼に『  』と言う事を伝え、一気に景色が変わって行くのだろう。




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