第2話 この世界について
時雨がこの世界で学んだ事は、この世界は元いた世界とそう大差のない世界となっている。
王国が多いという違いと、ダイナミクスという性がある事と、戦争のないガチの平和な世界である事が知らされた。
なので、スマートフォンらしき物体を持たされて、すぐ連絡を取れるようになった。
異世界の文字は時雨には元いた世界の文字に見え、時雨の文字は勝手にこの世界の文字に変換されるようになっていた。
若干ファンタジーが混じっているように感じた。
「えっと、DomとSubの間の特殊なコミュニケーションはPlayって言うんだよな」
「はい、正解です」
「だからPlayの前にSubの好きな事、苦手な事をちゃんと把握してそれらが一致するのが大事なんだよな?」
「その通りでございます」
「Playでコントロール権を持つのはSubで、Domはソレを預からせて貰ってるから大切にしないといけない」
「はい」
「で、Playの時に使う指示とか命令はCommandで、それで指示だすけど、いきすぎない様にSafe wordを決める必要がある。Safe wordを聞いたらやめて、ちゃんと褒める」
「間違いありません」
ミハイルの授業で散々たたき込まれた事を確認するように、時雨はミハイルに言う。
「CareっていうSubを褒めたりする……全肯定? するような行為が結構大事、基本は褒めまくる」
「よく覚えましたね」
「本当な!」
時雨はからから笑う。
時雨は勉強は得意でも不得意でも無かった。
だが、覚えておかなければ後悔することだけは覚えることが得意だった。
「で、After careっていう、お仕置きとか躾の後のcareも大事なんだよな?」
「はい、大切です」
時雨は学んだ事がちゃんと言えた事に安心できた。
「では、今日はもう少し進んだ所をお教えします」
「まだあんの?! Command覚えるのも大変だったのに?!」
「大丈夫ですよ、シグレ様なら」
ミハイルは引きつっている時雨ににこやかに微笑んだ。
──コイツ絶対Domだ──
時雨はそう思いながらミハイルの話を聞く体勢に入った。
「Sub spaceというものがあります。Play中にSubの意識がDomに完全にコントロールされている状態のことです。これはなにより信頼関係がないと起きることはありません」
「サブスペースね……」
「次にCollar、DomとSubの関係成立証明の証としてDomがSubに贈る首輪ですが──Collarと認識していれば首輪じゃなくても構いません。これをすることでSubは精神的に安定します、外されれば不安定になります」
「カラー……ふむ、なるほど」
「ここまでは宜しいですか?」
「おう」
時雨が真面目な顔をして頷くと、ミハイルはにこりと笑った。
「では続けます。Domが自分のSubに危害が加えられた時に陥るとDefenseという状態にDomはなります。Subを過剰に保護しようとして周囲に対し暴力的になってしまう現象ですね。その際Glareをまき散らす事もあります」
「ディフェンスは分かったけど、グレアって?」
「GlareはDomが躾やお仕置き中などに不機嫌になったときにSubなどに浴びせる、威圧感、オーラですね。これを受けたSubは恐怖に飲み込まれてしまい、意識を失ったり、Sub dropに陥ることもあります」
「なんだ、サブドロップって?」
「Sub dropはSub spaceと対になる言葉です。信頼を築けない、After careを行わない、Glareを浴びる、などの場合起きる現象です。最悪の場合死に至ります」
「し、死ぬ?!」
「ですので、Sub dropにだけは決してしないように注意してください」
ミハイルの言葉に時雨は何度も頷いた。
「では、今日の勉強はここまでにして……シグレ様にお願いがございます」
「お願い?」
「はい、私共の国の第三王子である、アディー殿下にお会いして欲しいのです」
「へ?」
「アディー殿下は幼少時の頃の経験からDomとSub、両方に恐怖心を抱くSubになってしまいました。会えるのはNaturalの私や父母のみ、御兄弟にも会うことができないのです」
「そ、そんな人に、俺を会わせるの?! まったまった!!」
時雨は慌てて止める。
「ええ、ですが抑制剤でももう限界なのです。この世界の人でダメなら異世界のシグレ様はと」
「……ちょっと待った、本人の許可は取ったのか?」
「異世界の人に、興味はあると」
「……無理はさせないからな」
「ご安心を私も側にいます」
「助かるぜ」
「では、お召し物をこちらに」
「分かった」
時雨は着替え、ミハイルの後をついて行った──
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