眩しいもの

 ──────────


 みこと大智だいちは、明け星学園の裏門にて、1人の人物を待っていた。


 明け星学園という場はとても騒がしいが、裏まで来ると流石に静かで、大智は安心していた。……だって、正門まで来ただけで聞こえてきた、少年少女の楽しそうな声……。

 彼には、耐えられそうになかった。


「大智、お待たせ、です」


 そこで聞き慣れた声がし、大智は顔を上げる。……そこには、満面の笑みを浮かべているカーラ・パレットがいた。


 大智は思わず安堵のため息を吐く。申し訳ないとは思いつつ、1人で行かせてしまった。そんな彼女が無事に帰ってきて良かった。……何かあればきっと、自分の責任になってしまう。


「お……お帰り、っ、なさいっ……」

「はい、です。……あ、これは大智の分だよ、です。貰って来た、ですよ」

「……ぇっ、ぼっ、僕に!? ……ッ、あ、ごめんなさいっ……その、ごめんなさい……」

「こういう時は、お礼を言えばいいんだよ、です」

「……ぁ、りがとう、……」


 カーラに諭され、大智は小さくお礼を言う。カーラは満足そうに頷いた。


「えっと、確か……そう、この紙に、感想を書いてほしいって言ってた、ですよ。それで明日、カーラがまた持って行くます」

「ぁ……うん、分かった……」


 お菓子を渡され、紙も渡され、大智はそれを落とさぬように……大事に優しく、腕に抱える。左手でそっと、それを支えて。

 がら空きの右手は、カーラと手を繋ぐことに使った。


「お菓子、すごい美味しかった、ですよ。大智もきっと、気にいる、ます」

「そ、そっか……ッ、うん、楽しみ、だな……っ」


 楽しそうに告げられたカーラの言葉に、大智は努めて楽しそうにしながら答える。そのまま2人は、海中要塞に戻るために歩いて。


 大智はふと、振り返った。


 そこには少し遠ざかったものの……明け星学園の校舎が、見える。校舎は日に照らされ、きらきらと輝いている……ように、見える。

 頭が痛むくらい、あんなにも、眩しい。


「大智?」


 カーラに手を引かれ、大智は視線を前に戻した。そして慌てて、ごめんなさいっ、と謝り。


 ……自分には、関係のないことだ。そう心の中で唱えながら、歩みを再開した。


 彼は暗闇に、帰っていく。


【第35話 終】





第35話あとがき

https://kakuyomu.jp/users/rin_kariN2/news/16818093076164410360

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