第28話「本格始動の備え」
本格始動
昨日は
「湖畔隊」の隊長、
ちなみに、何でですか、と聞くと、俺が疲れたから。と答えられた。そんな泉さんの疲労具合で決まるのか。まあ答えてくれたその声は、確かに微かな疲労が滲んでいたが。
それを聞いて、言葉ちゃんもようやく今日一日は休むことに合意してくれた。……まあ、彼女の元気は十分出たと思うが、休むときはとことん思いっきり休んだ方が良いと、私は知っている。
というわけで、今日。私たちはいつも通り学校へ向かい、授業を受けた。昨日一昨日、私たちが休んだ理由について、誰も言及はしなかった。勝手に、協力要請に応じているから、と思ってくれているのだろう。ズル休みがしやすくて結構なことだ。
放課後になると、言葉ちゃんと合流し、2人で海中要塞まで向かった。というのも、泉さんから「今回はこっちに来てくれ」、と私に連絡が入っていたからである。春松には俺から話しておくから、と。
「たぶん、『五感』逮捕の作戦について話すんだと思う」
歩きながら、言葉ちゃんはそんな予想をしていた。その声には大きな緊張と、微かな高揚が混ざっていたように思う。
対して私は何も感情が湧くことはなく、そうですか、と単調に告げるだけだった。
何重もの認証システムを通過し、中に入る。この動作にももう随分と慣れた。……中には既に泉さん、カーラ・パレットさん、
……というかカーラさんと大智さんは、いつも私たちより先にここに来ているような気がするのだが……大智さんは、まあ、彼の歳で働いているのは珍しくないからいいとして……カーラさんとかは、学校に行っていないのだろうか。この2人、私たちが学校に行っている時は何をしているのだろう。
今度聞いてみるのもいいかもしれない、と思い、この場では何も言わない。それよりも今は、真面目な顔をした泉さんが口を開いていた。
「小鳥遊、伊勢美、来てくれてありがとう」
「まっ、今の僕たちはここに来るのが仕事だからね。……それより、話を進めるんでしょ? 前置きはいいよ」
泉さんに笑顔で言葉を返す言葉ちゃんだったが、言葉の途中で彼女は真顔になる。それを見て、泉さんは頷いた。
「……小鳥遊にはお見通しか。そうだな、じゃあ遠慮なく、話を進めさせてもらおう」
泉さんは自分の座っていた椅子に座り直し、ぐるりとこちらを見渡す。
「お前たちも予想はしてるだろ。……約2週間前に言っていた『五感』逮捕の任務……その完遂に向けて、本格的に動き出そうと思う」
告げられたことは、言葉ちゃんの言っていた通り。
心構えは出来ていたものの、彼からの宣言に、私たちは思わず息を呑むのだった。
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