楽しいゲーム大会
私が辿り着いたところには、言葉ちゃんがいて。更にカーラさんと
……それでこれは、仲良くするための手段なのだろうか。……何故か3人は、トランプを行っていた。
「来てもらったとこ悪いけど、もうちょっと待ってて~。今カーラちゃんと尊さんが一騎打ちしてるとこだから」
「……はあ……」
「ねぇ!! ババ!! ババ引いて!!」
「え、そ、そんなこと言われても……!? どっちか分からないし……。そ、それに僕だって、ま、負けたく、ないし……」
「……あーーーーっ!!!! 5連敗なんだけど!?」
本当に待つのは、ちょっとで済んだ。大智さんがババじゃない方を引いたらしく、カーラさんは大の字になって地面に倒れる。そのオレンジ色の髪が、床に大胆に広がった。
……オレンジ……まだ会ったことがなかった人格だ。
「じゃあ灯子ちゃんも来たし、ゲーム変えよ。何が良い?」
「大富豪で革命大会!!」
「革命出来るかどうかは君の力量だと思うけど。……君、ゲーム苦手でしょ」
「うぐっ、お、オレは別にそんなんじゃ……!!」
「……あの、何でゲームする前提なんですか……」
おずおずと手を挙げ、私は尋ねる。すると近くにいた大智さんが、恐る恐る口を開いてくれた。
「え、えっとね……隊長、が、いっぱいああいう……ぇっと、カードゲームとか、ボードゲームとか……そういうの、っ、持ってきてくれて……その、僕たち、手を組むって話、だから……まずは親睦を深めよう、って……」
「……そのためのゲームと」
「……そう、みたい、です」
ありがとうございます、と教えてくれたことにお礼を言い、私は前に視線を戻す。……結局言葉ちゃんは、ボードゲームを展開させ始めていた。盤面上で人の一生を体験する、あの
「ねぇ、2人も準備手伝って~」
言葉ちゃんに言われ、私たちはそちらに近づく。準備って、何をすればいいのだろう。私、あのゲーム自体は知っているけど、やるのは初めてなのだが……。
ふと、隣にいる大智さんを仰ぐ。彼のその横顔は……頬が紅潮していて、とても、嬉しそうだった。
彼はすぐに私の視線に気が付き、その顔から笑顔が消える。眉をひそめ、こちらを恐れるよう、目を泳がせ始め。
「……ぇ、あっ、っ、なんっ、何でしょうっ……」
「……あ、すみません、見つめちゃって。……楽しそうだと思って」
「ひっ!? ご、ごめんなさいっ、お目汚しを……っ!!」
「いや別に、不快なんて思ってませんけど」
相変わらず、論理の飛躍が激しい、なんて思いつつ、私は尋ねる。
「……楽しいですか」
「……? え、えっと……、ぅ、はい……」
「……楽しいなら、それでいいと思います」
それだけ告げ、私は「準備」とやらに乗り出す。言葉ちゃんに渡されるがまま、おもちゃのお札を手に取った。どうやら5000円スタートらしいので、人数分の5000円を用意しないといけないようだ。
さり気なく、後ろに視線をやる。……大智さんは口元を緩めながら、何枚もある盤面を床に並べ始めていた。
何時間も掛けて、ようやくゲームが終了する。泉さんが億万長者になり、カーラさんが無人島行きとなっていた。私は……まあ、無難にゴール……。
と、しれっと言ってしまったが、ゲームを始めようとした途端、泉さんが乱入して来たのだった。「仕事飽きた~」、とか言って。
そして泉さんは、お金が得られるマスや他プレイヤーの邪魔が出来るマスにばかりピタリと止まっていき、自身が損をするマスには一度も止まることがなかった。彼はそのまま宇宙飛行士になり、お宝も大量ゲット、ギャンブルでは負けなし、そんなこんなんで多大なる資産を得て、一番にゴールをした。ボーナスルーレットでも、常に最高金額を得ていた。私たちとは天と地ほどの差があり、ぶっちぎりの優勝。ゲームバランスが完全に崩壊している。
「隊長、イカサマしてんじゃないのか!?」
「はっはっは。お前らとは技術が違うだけだ」
カーラさんが泉さんを指差して文句を言うが、泉さんはそう言って笑うだけだった。
……確かに、私たちは共通のルーレットを使っていただけだし、もちろんそこに種も仕掛けもない。自分の番だけそれを仕込む……とかも不可能だろうし。
本当に、技術の違いなのだろう。
「先輩、さっすが~……格差ありすぎて悔しさすら沸き上がらないや」
「た、隊長……っ、すごい……」
いつもは負けず嫌いな言葉ちゃんも、そんな気すら起きないらしい。笑いながら、ボードゲームを片付け始めていた。そして大智さんは、ただただ感心したように手を叩いている。
「……周りをねじ伏せて、自分だけが圧勝して、楽しいですか?」
「突然すっげぇ嫌な言い方するじゃん伊勢美」
いや、単純に気になってしまったから聞いただけなのだが。
だが嫌な言い方、と言った割に、泉さんは全く気にしていないようにゲラゲラ笑っている。そんなに面白かっただろうか。
私が見つめていると、泉さんは笑い終わり、肩を大きく上下させてから言った。
「……いやぁ、お恥ずかしい話、ついテンション上がっちゃって」
「……」
「俺も大概、負けず嫌いなんだよなぁ」
苦笑いを浮かべ、彼は私から視線を外す。……その先を追うと、そこには言葉ちゃんがいて。
ああ、なるほど、と私は、納得してしまうのだった。
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