第4話 14歳の涙味


涙の味を知ったことがあります


悔しくて泣く涙はしょっぱくて

悲しくて泣く涙は少しだけ辛い

苦しくて泣く涙は鉄のような味


涙に味も無いだろって、思う方もいると思いますが


本当に味がするのです

そして、その味が濃く、はっきりなる時は

その気持ちに蝕まれている時


大好きだったひいおばあちゃんが他界された時


涙が止まりませんでした

小学三年生の頃でした


ピーと一定の音階で保つあの音は今でも忘れられません

透明で壊れそうなくらい優しい音で落ち着いたのを覚えています


でもそれが人が亡くなる直前の音だと知った時

酷く恐ろしく感じました


音に対してではありません

自分、に対してです


だって死ぬ直前の音が心地よく感じてしまったのです

そんな自分が恐ろしくてたまりませんでした


この世からひいおばあちゃんが亡くなったと自覚した時

私は周りとは少し遅れて泣きだしました

まだ当時の頭では理解出来なかったのです

人が亡くなるということを

もうこの世にはいないということを


そして、初めて涙の味を感じました

不思議な感じでしたが、とても辛かったです

例えるなら、わさびを水で溶かしたようなほんのり溶ける感じ


私は辛いものや味の濃いもの全般が苦手なのですが

なぜかあの時の辛さは受け入れることが出来ました


すぐに消えるような儚い辛さだったからでしょうか


それは今でも分かりません


涙の味。それは凄く不思議です

気持ちによって味が変わるから


単なる思い込みなのかもしれませんが

私はそう思うのです


嬉しい時の涙はどんな味がするのでしょうか

私はまだ嬉しい時の涙を感じたことがないから分かりませんが


甘い甘いキャンディーのような味

ほんのり苦く甘い、チョコレートのような味

それとも変わらない味


私が嬉し時の涙を感じる時

まだこの感覚が、味覚が、残っている事を願って














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