第3話 三日目

 あの公園に行くことが毎日の日課になっている気がする。そう気付いたのは公園に向かっている最中だった。

 「何で行ってんだろ」と向かっている今でも思うが、足は止まらない。


 「なんでだろ」


 考えているうちに公園に着いた。


 「よっ!少年」

 

 僕がいつも座っている彼女の隣には空き缶が大量に置いてあって、座ることができない。


 「何本飲んでんすか」


 呆れる。いつもは三本くらいなのに、今日は十本だ。父さんと母さんより飲んでんじゃないかこの人。


 「えーと、いち、にー、さん、し、ごー、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう、じゅういち。じゅういっぽんだー!」


 酔いが回りすぎているのか……。

 僕はため息をつく。


 「十本ですよ……水、飲んだほうがいいんじゃないっすか」


 公園にある水飲み場は小さい子でも飲みやすいようなサイズで、僕は彼女の腕を肩に回して、ゆっくりと歩いていく。

 そして、水を出し、彼女はごくごくと美味しそうに飲む。

 彼女は、はあと息をついて落ちてくる髪を耳にかける。

 (……なんかエロい)

 やはり、大人の色気というものは凄まじい。僕は彼女との間に少し距離を取る。すると、高校生の僕を誘惑させるようね視線を彼女は僕に向け「大丈夫?」と胸をふさふささせて近寄ってくる。


 「ちょっと!それはだめでしょ!成人しているのなら、まだしも、俺、まだ高校生だし!」

 

 すると、彼女は驚いた顔をしてこう言った。


 「うそうそ。からかってただけ」

 

 ぴきっと僕の堪忍袋が切れた音がしたがこらえた。なんなんだこの女は!

 彼女はふうっと一息ついたようにベンチの真ん中に座る。

 あの、僕の場所は!?とつい大声を出したくなるがこらえる。近所迷惑くらい考える。


 「今日さ、会社で怒られちゃって」

 「酒、深夜に飲んでいるからじゃないですか」

 「あー。それもあるかも」


 ふふっと笑いながら言うが、辛そうにしか見えなかった。


 「……精神結構やられちゃってさ。発散先がビールしかなかったんだよ……」


 大人って大変だなと思う。

 ……この人は母と父とは少し違うのかもしれない。そう、思った。

 彼女の辛さの度合いは分からない。

 僕は上手い慰め方とかできない。彼女は顔を手で覆ってこう言った。


 「見ないで」


 僕に出来ることは声を抑えながら泣く彼女の背中を擦ることしかできなかった。


 

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