7月31日、夜の自宅で。
十九時三十三分
二橋亮二が逮捕されて二日後、少年は一抹の不安を拭えないでいた。それはあの写真のことだ。
「もうすぐ……なのか」
少年は自分の部屋のテーブルに座り自分が死んでいる姿の写った写真を眺めていた。
十九時四十三分。写真の裏面に記してある時間まで残り僅か、大丈夫だと思っていても、もしかしたらと考えてしまう。
(スマホでも見るか……)
不安を振り払うように少年はスマホを開く。するとそこには一つの速報が表示されていた。
「午道正弘、当選確定……」
表示されていたのは市長選の速報だった。
「まあ関係無いな。とりあえず軽くイベントを周回しよ」
ゲームのアプリを開く。そしてホーム画面には大きな時計を持った銀髪の女性が表示された。
『マスター、未来は変えられます。共に暗い未来を照らしましょう』
そうしてゲームを進めようとした時、ピンポーンという音が鳴り響いた。どうやら来客が来たようだった。
「れーい! 出てもらってもいい?」
「わかった!」
少年はスマホを置き、急いで部屋を出た。
その直後、スマホから一通のメッセージが届く。送り主は少女だった。
『二橋亮二が失踪した。現在行方不明らしいから気をつけてくれ!』
――――――――――――――――――――――
十九時四十三分
玄関へ向かうために少年はリビングを通りがかる時、リビングに置いてあるテレビからは市長選についての放送が耳に聴こえてきた。
『午道さんは今回の市長選に選挙カーを一台しか使っていなかったんですね!』
『はい! 私のやりたいことを私自身の言葉で伝えるために選挙カーは私の乗っている一台だけ使用しました』
その内容に少年は小さな違和感を覚えた。内容はよくわからない、だがどうしても拭えない違和感がそこにあった。
しかしその違和感も再び鳴らされた呼び鈴の音に掻き消される。
「あ、はーい! 今出ます!」
急いで玄関まで向かい扉を開いた。
「…………え?」
そこに居た人物を見て少年は言葉を失う。
刺すような鋭い目。身長百八十センチ以上、真夏だというのに黒いジャケットに黒いズボン。そして━━燃えるような火傷の痕と拳銃が握られた右手を持った男がそこに立っていた。
「二橋亮二……」
「お前が━━━か」
あの時と同じ感覚が少年を襲う。
二橋亮二は小声で話ながら拳銃を少年に突きつけた。
「じゃあな」
━━バァンッ!!
乾いた音。冷たい感触、そして痛み。
不測な出来事に少年は疑問を抱えたまま、意識を落とし倒れてしまう。
そんな少年が最後に考えていたのは、
(お母さんとお父さん大丈夫かなぁ━━━━)
そうして少年は再び命を落としてしまった。
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