幕間の物語、深夜の出来事

 ふと腕時計に目をやると一時三十六分。俺たちが逃げ始めてから五時間は過ぎていた。警察は既に撒いたが、まだ予断を許さない状況だろう。


「クソっ! もう走るの無理!」


 路地裏を使って逃げている最中、仲間の一人が唐突に大きな声を出し四つん這いに倒れた。急な出来事でバタバタしていたのだ。倒れ込んでも無理もないだろう。


「落ち着いて、大きな声を出したら見つかっちゃうよ」


 もう一人の仲間の彼女が嗜めながらその仲間の背中をさすった。相変わらず優しい人だ。だからついついその優しさに甘えてしまうのだが。


「仕方ない。一旦ここで足を休めよう」


 そうして俺たち三人は地べたに座り込んだ。フカフカのベッドが恋しいものだよ。


「それにしても亮二のヤツ。いきなり俺たちの隠れ家をバラすとはどういうことだよ」

「亮二には亮二なりの考えがあってのことだろう。とはいえ、再会した時に恨み言の一つは言っておきたいなぁ」


 全くアイツは、頭は良いんだが正しいとなるとすぐに突っ走るヤツなんだ。それに何度か救われているが、もう少し考えて欲しいものだよ。


「それでリーダー、これからどうするんだよ」

「恥ずかしいからリーダー言うのやめろや。これを見てくれ」


 亮二からの報告……隠れ家の中にいつのまにか置いてあった手紙を仲間に渡した。


「なになに……俺を追跡する者がいる、警戒してくれ……。なんだとぉ!」

「しー! 三井君、声小さくして」


 仲間は手紙の内容を見て驚いた。


「とりあえず、亮二が警戒しろというほどだ。アイツのためにもその追跡してるヤツを調べて回ろうと思うんだ」

「具体的にはどうやって?」

「そりゃあお前、僕たちは亮二みたいに顔は割れてないでしょ?」

「まさかぁ……」


 俺は立ち上がりながら声高々に言い放つ。情報が無いときにはいつもこうしてたんだ。公園の時もビルの時も。


「街で聞き込もう!」

「またかよ!」

「二人とも、しー!」


 悪態をつく仲間、しかしその顔は薄ら笑いをしていた。相変わらず顔と態度が一致しないよなぁ。

 さて、休憩は終わりだ。亮二を追いかける追跡者を探すために動こうか。

 それにしても追跡者とは一体誰のことかねぇ。


「あ!」


 肝心なことを忘れてた!今一番大事なやつじゃあないか。


「どうしたの?」

「追跡者を探す前に次の寝床を探そうか」


 俺の言葉に二人はガクッと身体を横に曲げた。仕方ないでしょ、完全に忘れてたんだからさ。

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