7月28日、連合。
九時二分
「情報が少ねぇ……」
「表沙汰になったのが先月辺りだからな。ネットでは少々限界があるみたいだ」
日歳連合と二橋亮二について調べ始めて約二十分。三人は未だにスマホを使って情報収集をしていた。
「それっぽいヤツもあるにはあるが、信憑性が低すぎねぇか?」
「そこは仕方ない。SNSの書き込みを見ても陰謀論ばかりだ」
友人と少女が会話をしながらSNSの書き込みと二橋亮二について調べ、少年は黙々と連合が起こした事件を調べていた。
そうしていると友人が痺れを切らしたらしい。席を立ち上がった。
「ちょっとトイレ!」
そうしてトイレに向かった友人の入れ替わりで女性店員がテーブルにやって来た。
「こちらお下げしますね」
「あ、ありがとうございます。あとこれを三つください」
「かしこまりました」
少年が空のコップを三つ渡し、追加の注文をする。
その後友人が戻って来た。
「なぁ、とりあえず調べた内容を纏めねえか?」
「……そうだね」
友人の提案に少女が同意し、情報収集は一旦ここで区切りとした。
「まずは俺から話すよ。とりあえずわかったのは日歳連合の規模と起こした事件だった」
そうして少年はスマホの画面を二人に見せる。それは連合の規模と活動の詳細がまとめられていた。
「
「さいたん?」
友人の疑問に少女が答えた。
「一月一日の朝。日本では一番めでたいとされる時間帯だ」
「そんな変な言葉を組織の名前付けてるんだなぁ」
「話を戻すよ。日歳連合が起こした事件は主に二つ。『
スマホの画面をタップして『大和公園放火事件。日歳連合の恐ろしさ!』という記事を開く。
「まず大和公園放火事件。六月六日の深夜の時間帯、S県にある大きな公園で放火事件が発生した。幸い死者は出なかったけど、怪我人が数人出たんだ。消火後の捜査でいくつかの公園の遊具や公園で祀られてた地蔵が人為的に破壊されていた」
「それだけじゃ、その連合がやったかわからなくないか?」
「事件後、マスコミに声明が送られたんだ」
記事にある画像をタップして拡大する。そこには、
『私達は日本歳旦連合。大和公園の放火は私達がやった。遊具を破壊してしまったことは申し訳なく思う。しかし神のご意志を実現するため必要なことだった』
このような言葉が綴られていた。
「当時、遊具が破壊されたことは公表されて無かった、警察は遊具が破壊されたのを知ってるのは犯人という結論に至ったんだ」
「遊具を壊したことを謝るって……変なヤツらだな」
「テロリストの考えなんてわからない物だ」
「あと声明には"神のご意志"という一文があるのを加味してこの団体は危険な宗教団体という位置付けになったんだ」
「宗教団体か……何をするかわからないのは確かに危険だ……」
少年は放火事件の記事を閉じ、次に『鐘村ビル襲撃事件! 白昼堂々と起こった大胆な犯行!』という記事を開いた。
「次は
「……ッ!」
「マジかよ!」
死者。この言葉に二人は緊張した面持ちになる。
「事件は六月二十一日、M県にある鐘村ビルで発生した。午後二時十四分、鐘村ビルの方から銃声のような音が聞こえたという通報があったんだ十分後に警察が現場に到着し捜査をしてみると、荒らされたビルの一室から鐘村ビルのオーナーの遺体が発見されたんだ」
少年がチラリと二人の方を見ると、友人は苦虫を噛み潰したようような表情をしており、少女は何か思案している表情を浮かべていた。
「その後周辺の聞き込みで五人組の集団が鐘村ビルに入って行くところが目撃されたらしい。五人組全員の顔は判明できなかったが、一人だけ監視カメラに映っていたんだ。その人物が二橋亮二だった」
「なんでその犯行が日歳連合の物と判明したんだ?」
「大和公園放火事件の犯人との関連が見つかったらしいんだけど……その辺りの情報は見つからなかった」
この二つの事件の関連性、どちらも複数人で行った犯行ということぐらいしかわからない。少年はもどかしい気持ちを抑えるように水を呷った。
「オーナーの身元はわかってるかい?」
「オーナーは
「…………」
「…………ふむ」
被害者の状態を聞いて二人は黙ってしまった。
「と、ともかく! 警察は唯一素顔が判明している二橋亮二を殺人の容疑で指名手配したというのがこの事件の顛末なんだ」
静まり返ったこの空気の中、少年は無理矢理話を締め括った。
そうして数秒後、友人がおもむろに口を開いた。
「俺たち、よくよく考えるとヤベェヤツらを相手にしてるんだな……」
「今更な話だろう。それに時田クンを死なせないために動いてるのだろう? そんな弱気になっても仕方ないことだ」
弱音を吐いている友人に向かって少女は仕方ないと言い切った。
「ま、それもそうかぁ。レイを救うために動くんだ。後悔してられないわな!」
そうして友人は自分の顔を両手で叩いた。
「よし、それじゃあ次は俺とヤシロの番だな! 二橋亮二についてと今回の漏洩したことについてだ!」
「後は夏の怪異についてSNSで情報を集めてみた」
そうして二人は同時にスマホをテーブルの上に置き、自身の注文した飲み物を飲んだ。
「なんで俺のマネするんだよ!」
「それはこちらのセリフなんだがなぁ!」
学校で犬猿の仲と評される二人だが、今はどこか相性の良いコンビに見えて少年はクスリと笑った
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