第82話 歓迎会
フォーラン連邦第三調査基地は、第一調査基地のときと違い、多くの人から歓迎の声を貰った。
第三調査基地へ到着した日の夜には、基地の大ホールにて豪華な歓迎会が行われ、大きな純白の平皿には表面がしっかり焼かれたレアステーキ肉に、色彩豊かな野菜とワインの様な少し赤みがかったソースがおしゃれに掛けられていた。
(フランス料理みたい)
連邦の食文化は分からないけど、味だけでなく見た目すら芸術品のように美しい料理の数々に驚きつつ、綺麗に盛り付けられた料理を小皿に移して楽しみつつ、ホールの片隅で歓迎会の全体像を見ていた。
「やっぱりミーアさんって凄いんだなぁ・・・・・・」
「んにゃ?」
トマトのような甘酸っぱい野菜にバジルソースのような物と混じえて口に運びつつ、ホールの中央でやたら人集りが出来ている場所を見た。
虎やら狐やら、アルメヒ前線基地でも殆どみることのないような様々な特徴が現れた獣人の人たちが、深い青色のチャイナ服の様なドレスを着たミーアさんを囲んでいた。
自分やリリィにも挨拶にやって来る人は多いけど、ミーアさんは歓迎会が始まってからずっと何十人と多くの人から囲まれている状況だ。なので、第三調査基地へやってきてからミーアさんとはまともに会話できた試しがない。
「約半世紀ぶりに龍姫様が国へ戻ったんですからね、多分ですけど、今では本国にも話が伝わって国のお偉いさんとかが態々挨拶の為にこの基地までやって来ると思いますよ?」
「あ、リアナさん」
ホールの片隅でリリィと一緒に食事をしていたら、片手に飲み物を手に持ったリアナさんがこちらまでやって来てくれた。
リアナさんは黒豹に似た面影を持つ獣人族の女性だ。それもリリィと似て動物側の特徴が大きく出ているタイプ。
サラサラとした艶やかな黒の体毛に、スラッしたしなやかなモデルの様な体型をしているので、男性の貴族服の様な男装をしていても凄く様になっている。
自分から見てもリアナさんはかなりの美人さんだと思うけど、異性よりは同性から好かれる様な見た目をしていた。
「やっぱり獣人族の方達にとって、ミーアさんは特別なんですか?」
「そうですね、龍人族っていうのもあるのですが、やはり龍姫様自身の偉業もあるので、私の様な若い獣人でも龍姫様の偉業は言い伝えられているんですよ」
審判の日から新人類の時代が始まって、獣人族の頂点とも目される龍人族は既にミーアさんしか居ないだろうと言われている。
それだけでもミーアさんが敬われる理由にはなるんだけど、リアナさんが言うには、ミーアさん自身がかつて成し遂げた偉業によるのも大きいという。
「偉業といえば、まず魔法ですね・・・・・・龍姫様は火と水の使い手であり、大陸でも珍しい二属性の戦略級魔法使い手でもあるのよ」
本来であれば、戦争に置いて大きな影響を及ぼす戦略級魔法は、優れた魔法使いが何十人と命を賭して行使できる道外れた魔法だ。
しかもどんな場所でも使えるというわけでは無く、この世界の暦や月に当たる衛生の満ち欠けによる限られた条件下でやっと使えるような魔法だ。
「龍姫様は専用の装備があれば、いついかなる状況下であっても戦略級魔法を行使することが出来る。かつて聖王国との戦争では水の戦略級魔法〈
水の戦略級魔法〈
これによって今よりも酷かった聖王国の獣人狩りが鳴りを潜め、その数十年後に再開される大戦までの間、連邦はつかの間の平和を享受することが出来たそうだ。
「この基地に居る多くが、龍姫様の偉業を学校で習った者達が多いのです。なので歴史的偉人と会えるというのは大変名誉なんだと思います」
「学校ですか」
「といっても軍学校ですけどね、地理や歴史から物書き計算、あらゆる物を学びます。ソラさんが使う古代魔法言語だって軍学校の選択科目のひとつにあるんですよ?」
そしてリアナさんは、軍学校の選択科目で古代魔法言語を習っていたので、自分の案内役に選ばれたんだという。
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