第66話 後日談・後
「白い炎ですか?」
今回自分がアルメヒ前線基地にやってきた理由は、フロウゼルさん達の顔を見るということもあるんだけど、理由の一つに現在あの蝗害の発生場所である古代遺跡がどうなっているか話を聞くためでもある。
「そうだね、君たちが基地から出発してから少し後ぐらいに、遺跡方面から巨大な白の炎が立ち昇ったと報告があった」
報告によればシロの人格が戻った次の日、自分たちが帰った後に基地の方面から巨大な白い炎が昇った。
それは日中の出来事で、音もなく巨大な白の火柱がただ揺らめいていたらしいんだけど、放置しておくことも出来ず調査に乗り出しており。
シロが放った魔法は強力で一日経過した後でも周囲の氷が溶ける様子はなく、依然として凍ったままだったんだけど、その白い炎が出現した遺跡周囲は綺麗さっぱり氷が溶けていたそうだ。
付け加えるなら、遺跡周辺にあった夥しい程の〈黒翅蝗〉の亡骸や調査隊の隊員達の遺体も綺麗さっぱり無くなっており遺跡の周りは綺麗になっていたそうだ。
ただ先の件があるので、遺跡内部がどうなっているかは分からないようだけど、周囲にモンスターや動物たちが戻ってきているので脅威は無くなっている可能性が高いとのことだった。
「でもシロが放った魔法で出来た氷って未だ溶けていませんよね?何でいまになって溶けたんだろう・・・・・・」
「分からない、ただ言えることは君の従魔が放った氷魔法はただの氷魔法では無いという事だ。そしてその白い炎も見た目からしてただの火炎魔法ではあるまい」
シロが放った銀の風、その一部始終を間近で見ていたアリアによればシロは始原の氷なる魔法を使ったらしい。
俺も始原の魔法・・・・・・その雷魔法は使えるけど、シロがどうやって氷の始原の魔法を使えたのかは分からない、シロ自身に聞いてみてもどうも覚えていないらしく、俺が聞いてみれば可愛らしく首を傾げていたのが印象的に残っている。
ただフロウゼルさんが言ったように、ただの氷魔法でないのは間違いなく、半月経った今でもその氷が溶ける様子はない。
最近では永遠に溶けない氷として、新たに派遣された調査隊の学者の方々がこの氷の解明に熱を上げているようで、フロウゼルさん曰く当分の間はこの氷の調査が主になるそうだ。
(白い炎か・・・・・・)
未だ忙しそうなアルメヒ前線基地を出て、森で待っていた太郎と一緒に帰路につく。
その帰りで俺はフロウゼルさんが教えてくれた謎の白い炎について考えていた。
(多分、悪い人じゃないと思うんだけど)
誰がやったのかは分からないけど、ピンポイントで遺跡を狙うって事は、その内部から発生していた〈黒翅蝗〉の巣を消したかったからだと思う。
それだけで考えてみれば白い炎を使った人物は理性のある人ナんだろうけど、もしかすれば人じゃないかもしれない。
従魔達が怯えていたように、あの黒いイナゴ達は周囲の生物達から恐れられていて、それを見かねた未知のモンスターが巣を消滅させた可能性もある。
少なくとも、巨樹の森や前線基地を行き来する中で白い炎を使うモンスターは見たことがない。
むしろ、火を使うモンスターが少ない。
なので一度でも見たら忘れることは無いはず。この地で暮らし始めて結構立つけど、それらを一度でも見たことが無いってことは無秩序に暴れるようなタイプではないのは間違いないはずだ。
だったら脅威となる可能性は低いんだけど気になるのは間違いない。
「なぁ、太郎・・・・・・白い炎って使える?」
「わぅ?」
太郎の頭の上に顎を乗せて聞いてみるけど、なにそれ?といった様子だ。
そりゃそうか、万が一太郎だったら素の戦闘能力で解決出来るだろうし、態々白い炎を使わないよな。
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