第57話 旧人類の技術

「魔石生成、そんな事が可能なんですか!?」


 いつも冷静なイメージには似合わない程狼狽えた様子のフランクさんは思わず席を立ち、衝撃的な事を言ったのであろうフロウゼルさんに問いただした。


「あぁ、正しくは龍脈エネルギーを結晶化させた人工龍石生成装置だがね、本質的には魔石と変わらんよ、寧ろこちらのほうが良いとまである」

「そんなバカな・・・・・・これでは国力のバランスが変わってしまう!」


 この世の終わりだ!と言った様子で頭を抱えるフランクさんを呆然と見つつ、はぁと小さくため息をついて目を閉じるフロウゼルさん。


 こんな状況で、魔石ってなんですか?とは聞きにくい・・・・・・


 そんな俺の気持ちを感じ取ってか、フロウゼルさんが魔石について解説をしてくれる。


「魔石はそのまま魔力が籠もった石のことだよ、主に魔道具だったり魔力の貯蔵用として広く用いられるんだ」

「魔道具ですか?」

「魔道具は生活でも広く使われるし、戦争や医療にだって使われる。誰しもが魔法を使えるほどの魔力を持っているわけじゃないからね」


 聞けばカイロのように熱を発する魔道具とか、水を生成する魔道具のように日常生活で使うシンプルな道具や。


 都市部では街灯としても使われているそうでその用途は多く、電池の様な存在みたい。


 電池といって出力が桁違いだそうで、軍事においても魔石で動くパワードスーツの様な魔導鎧といった物から、魔力に乏しい兵士が使用できる使い捨て型の魔法杖の魔石とかもある。


 前世で言うところの原油の様な物が生成出来る装置が遺跡から発掘されたそうだ。


「・・・・・・マズイですよね」

「そうだね、殆どは破損していたみたいだけど一基だけ稼働出来る生成装置があったみたいだ」


 厳密には魔石ではなく、龍脈を使った龍石を生成する装置の発掘みたいなんだけど、この龍石も魔石と互換性があって、本来魔石を嵌め込む魔道具に龍石を装着して使える。


 ただ出力が高すぎるので調整が必要みたい。


(そりゃ、仲の悪い国が今後を左右する装置を見つけたらフランクさんもフロウゼルさんも嘆く訳だ。)


「じゃあ、遺跡調査が急に出来なくなった理由って」

「私達に知られたくないんだろうね、事実、他の陣営も締め出しを食らっているそうだ。流石に物が物だから見せたくないんだろうね」


 じゃあ、何故そんな重要な装置があるって分かったんだろう?と思ったんだけど、俺の疑問に感づいてかフロウゼルさんが妖しい笑みでシーっと人差し指を唇に軽く当ててそれは秘密、とだけ教えてくれた。


 うーん、人の世界って大変なんだなって思う。


 周囲には太郎や向日葵と言った仲間たちとのんびり暮らしているから特にそう感じる。


「もしこの装置が量産化されれば、今後の戦略は大きく変わるだろうね、龍脈が流れている土地は国の最重要地になるし、下手すれば戦乱の種になりかねない」









「だからといってそう悲観することもない」


 重くなった雰囲気を変えるようにフロウゼルさんはそう言う。


 今語ったのは最悪の場合はそうなるだろう、というだけであって可能性は低いと考えているそうだ。


「でもこれがあれば世界のバランスが変わっちゃうんですよね?もし量産化でもされたら……」

「そう、その量産化が問題なんだ。基本的に旧人類の技術や聖遺物を模倣もしくは複製はかなり難しい」


 だからこそ、聖遺物の発掘を専門で行う冒険者の聖遺物ハンターが存在しており、彼らはダンジョンや遺跡から発掘される聖遺物を売って生計を立てている。


 それらの専門ハンターに需要があるのは偏に聖遺物の複製が出来ないからだそうだ。


 旧人類の人達はC級相当の聖遺物を作れたらしいんだけど、現代だと最低ランクのG級聖遺物すら作成が不可能なんだそう。


 今回発掘された人工龍石生成装置も旧人類の技術であれば、幾ら現存する物が存在するとはいえ複製は難しいだろうとの見方らしい。






「遺跡調査が出来ないってなると、明日からどうするんですか?」


 今日は予想以上に移動に遅れが生じて第二調査隊の拠点建設だけで終わってしまった。


 なので明日から遺跡調査が始まって、それに同行する形で俺も入れる予定だったんだけど・・・・・・


「基地に帰還しよっか、ソラ君が言っていたことも気になるしね」


 あっけからん、といった様子でフロウゼルさんはそう言った。





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