第55話 古代遺跡②
一際大きな天幕の下に2人の男性が立っており、これから行われようとしていた遺跡内部の調査に対して話し合っていた。
「ふむ、流石にこれ以上は遅延させることは出来ないか」
「えぇ、黒の陣営の調査隊は夕方頃にはここへ到着するかと」
遺跡を見つけてそろそろ半月が経とうとしている。
神の地を隔てる谷を沿いながら森へ入れば、大型従魔も連れていけることが判明し、ここ一週間で現在調査中の謎の古代遺跡を前線基地化する案が浮上した。
遺跡を中心とした半径一キロ圏内であれば、森に住む強力なモンスター達は出現せず。更なる調査によって、この遺跡地下には巨大な龍脈が存在し、それによって莫大なエネルギーが存在することが判明している。
龍脈が流れる場所は非常に危険ではあるものの、そこで採取できる植物は総じて品質が良く、作物の成長も早い
龍脈が流れる場所は局地的な怪異化、つまりはダンジョン化することも多い
現状、始まりの森の調査が想定より進んでいない中で今回の遺跡発見は、今後の調査に禊を打つ天啓とも言えた。
「しかし不気味ですね、遺跡に連れてきた従魔達は多少落ち着きは取り戻しましたが、それでもストレスを溜めているのも多いとか」
「ただそのお陰でこうやって安全に調査出来るわけだ。もしかしたら旧人類の技術かもしれん」
口いっぱいに溜めた煙草の煙を吐き出し、大詰めを迎えた遺跡調査に白の陣営の最高責任者カスティオは興味なさげに、その部下であるライに話す。
「結局のところ、旧人類の聖遺物は見つからなかったし、今更龍脈を使った技術を研究したところでどうする?」
「確かに魔法科学が発達した今、態々龍脈研究を行うもの好きは居ませんね」
貴族として、冒険者として、研究者として
高いレベルの知識を持つカスティオにとって、龍脈エネルギーを制御する旧人類の技術は特に欲しいとは思わない
実際に龍脈エネルギーは魔力に比べて強力ではあるものの、その土地でしか使うことが出来ず。その大半が魔法で代用が可能だ。
龍脈を研究する人間達は、農業に革命を起こすなんて息巻いていたが、龍脈が及ぼす範囲は精々数キロが限外、その程度では億に達する人口を持つコーヴィス聖王国の国民の食料を賄うことは出来ない
第一、龍脈付近には強力なモンスターが住み着くことが多く、管理も大変だと聞く、放置すれば旨味の無いダンジョンに変わったりとカスティオにとって、龍脈は邪魔な存在だと言えた。
「黒の調査隊は予想より到着が遅れるそうです。」
「何?理由は」
日が傾き始め、空が夕焼けに染まり始めた頃、カスティオの元にそろそろ到着するはずの黒の陣営の調査隊が予定よりも大幅に遅れていると、隊員から報告を受ける。
「どうも彼らの従魔達が怯えているそうで」
「ふむ、従魔が怯えるのはどこの隊も一緒か」
数多の戦場を潜り抜けてきたカスティオにとって、情報が不足している状況と言うのはストレスの要因の一つだった。
元々、カスティオ自身が完璧主義者というのもあるだろうが、あらゆる状況下に置いて、情報とは決して欠かすことは許されない要素の一つ
なので本質的に未知を切り開く調査隊という任務はカスティオに向いておらず。今回も不足する情報に苛立ちを隠せないでいた。
「気になりますか?」
「気にならんほうがおかしいだろう」
本来モンスターが好むはずの龍脈が存在する地にてモンスターが寄り付かないという現象
聖王国の科学者達は、それらを旧人類の未知なる技術が使われているだろうと言っているが、詳細は不明
これらを解明するために、選抜された調査隊員が昼の内に遺跡へ侵入し巨大な古代遺跡の内部を調査してはいるが
カスティオの心には、どこかざわめくような不安が燻ぶっていた。
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