第49話 向日葵の危機?
「ただいま~」
アルメヒ前線基地に一泊して、次の日の昼には我が家に戻ってきた。
俺と太郎が留守にしていても、巨樹の森にある拠点は何時もと変わらず平穏で、色鮮やかな花畑と周囲を漂う光蜂のお陰で幻想的な光景が広がっていた。
一日ぶりに見る家の裏手に生える不思議な木は、また一段と大きくなった様な気がする。
・・・・・・ただ家の裏手にある花畑の片隅に光蜂によって爆殺されたモンスターの亡骸があるけど気にしてはいけない
拠点周りで一番目立つ不思議な木を見ていたら、同じ視界の中に向日葵が映っていた。
いつもなら小屋で寝ているか、畑で土いじりをしているんだけど、今回は何故か向日葵は家の屋根に登り俺と太郎をジーッと見ている。
どうやって屋根の上に登ったんだろう?
そう思わなくないけど、向日葵はこちらの存在を確認するだけで特に動く気配はない
ただその姿は勇ましく、何処か神々しさすら感じた。
光る風見鶏かな?
太郎はそのまま俺の横を歩き、拠点の敷地内に入る。
不思議な木によって、拠点やその周囲を覆うほどの巨大な帳、光のベールが包む内側は、春を感じさせる暖かさと色鮮やかなお花畑が広がる。
毎日のように環境が劇的に変わる巨樹の森に置いて、不思議な木によって環境が一定に保たれるというのは凄く有り難い
ただ欠点としては心地よすぎて眠たくなるぐらい?
「おうおう、心配してたか?夜、月」
そんな事を思いつつ、家に向かって歩いていると先日建てた厩舎から黒い影が飛び出してきた。
その正体は、一日経過して元気が戻ってきた様子の影狼の二匹、狼らしい良い脚力でこちらへ向かって突進してきた。
初めて会った時はボサボサの毛並みをしていたんだけど、俺と太郎が居ない間に最近できた水路で水浴びをしたらしい、その漆黒の毛並みは艷やかで肌触りがとても良い
ご飯もたくさん食べて元気いっぱいな様子
ドスンッ!
結構なスピードで腹に突撃してくる二匹を何とか受け止め、そのままお腹にグリグリ押し付けてくる二匹の頭をなでなでする。
下手をすれば背骨が折られかねない衝撃だ。
ただ夜も月も、尻尾が千切れんばかりに振り回し、喜びを表してくれる姿が愛くるしい、ただ一日留守にしてただけなのに数年ぶりに会ったかの様な反応だ。
「あれ、シロは?」
そうやって夜と月と戯れていたら、真っ先に突撃してくる候補のシロが見当たらない
周囲を確認してもシロの姿は見当たらなかった。
今回、シロはお留守番をして貰っていた。
俺と太郎が前線基地の方へ行こうとした際、俺にくっついて離れそうに無かったんだけど、何とか説得して家を出たのだ。
シロも何時かは基地に連れて行こうと思っているんだけど、いきなり狼姿のシロを連れて行っても向こうの人に警戒されちゃうし、人として行くにしてもシロが変身できる人物は全員故人だ。
その為、フランクさんに聞いてペットを基地に連れてくる許可を貰った。だから今度は狼シロの姿で連れていけると思う
なので次に基地へ行く際は一緒に連れていけるんだけど、今回はそうもいかなかったのでお留守番をして貰っていた。
ただ出発の際に結構揉めたので、今になって振り返ってみると少しキツく言い過ぎたかな・・・・・・そう思い、頭の中が不安でいっぱいになりかけた瞬間
「ン!」
太郎の背中に乗っていたやたら緑色の小鳥が変化し、いつもの人の姿のシロの姿に戻った。
「まさか小鳥に変身してついてきていたのか?」
警戒心の強い小鳥が何故か俺や太郎に懐いてきたので疑問に思ってたんだけど、まさかその正体がシロだとは思わなかった。
いつの間に鳥に変身できるようになったんだろう?
「・・・・・・さてはバレるのが怖くて、隠していたな?」
「・・・・・・ン?」
あ、やべっみたいな顔をしてすっとぼけて居るけど、あからさまに挙動不審な姿をしている。
俺も腹芸が出来る訳じゃないけど、流石にシロはあからさま過ぎる。
まだ人の姿で基地に連れて行くのは難しいかもしれない
「やっぱ我が家よなー」
「わふ」
家に戻り、早速床に寝転って身体を大の字に伸ばす。
太郎も両前足を伸ばして強張った筋肉を伸ばしていた。
うん、やっぱ住み慣れた場所が一番だ。
昨日、フランクさんに案内されて泊まった宿も豪華で過ごしやすかったんだけど、やっぱり我が家が一番、いざ帰ってきてみるとつくづくそう実感する。
「でも寝具は欲しいよなぁ」
我が家の方が安心するし、料理に関しては手間暇や料理人の技術では負けているんだけど、食材の差でややこちらの勝利って感じ
ただ寝具に関しては、高級ホテル顔負けの巨大なベッドに肌触りの良いシーツや掛け布団と完全に負けていた。
「・・・・・・」
部屋の隅に畳まれているせんべい布団、今までは特に気にしていなかったけど、いざ良いものを体験するとなんか気になる。
(向日葵の抜けた羽根で羽毛布団とか作れないかな・・・・・・?)
抜けた後もずっと光っている向日葵の羽根なんだけど、その触り心地は抜群に良い
遮光性の高い布で羽根を覆い、羽毛布団を作れたりしないだろうか?ただそれにしても量が足りないなど考えていたら
「コケーーーーー!」
屋根の上に乗っかっている向日葵が、俺の邪気を感じたのか大きく吠えた。
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