第47話 前線基地のお家
「ここがソラ殿の家になります」
外縁街を探索した後、アルメヒ前線基地の内地に入って案内された場所は〈黒の塔〉からほど近い立派な一軒家だった。
「いいんでしょうか?態々自分のために家を用意してもらって」
以前、フロウゼルさんとの一騎打ちの後、基地内で自由に使える場所を用意するとは聞いていたんだけど、まさかこんなに立派な家を用意して貰えるとは思いもしなかった。
「・・・・・・あまりこう言っては良くないのですが、ここは亡くなった隊員が住む予定の場所だったのです」
気まずそうにフランクさんは眉をハの字にして申し訳無さそうに答える。
「でも他の調査隊の人達が・・・・・・」
「一般隊員でも待遇は良いですし、ソラ殿がこの家を使ってもそこまで心配もありません、隊員達は寧ろ立地の方を気にしますね」
聞けば、今回使わせてもらえるお家はそれなりに地位のある人が持てるクラスの家だそうだ。
この手の話って周りから嫉妬を貰いがちなんだけど、フランクさん曰く、今回に関しては余りそういう心配は無いみたい
周囲が貴族出の冒険者が大勢住んでいるので堅苦しいだの、住みにくいとか
単純に仕事場から近いのが嫌なんて人も居たり、逆に娯楽の多い外縁街に家を建てたい、なんて希望の方が多いみたい
後、一般隊員でもA級やB級冒険者のエリートの人達なので普通に待遇は良いそうだ。
なので立派な家でも場所によっては希望者が少なく、結構余っていたりするそう
「ここであれば、ソラ殿が何か困った際に直ぐに私達が来れますし、二つ先にはアーマレア殿の屋敷もあります」
アーマレアとはフロウゼルさんの家名だそうだ。そしてフランクさんが指を差す先には大きな屋敷が存在し、中には噴水や花園が塀の向こうで微かに見える。
他にもフロウゼルの屋敷だけはその一帯が頑丈な塀で囲われ、門の前には衛兵が常駐しているという特別待遇だ。
その豪華さに、ここは本当に基地の敷地内なのか?と疑いたくなるけど、アルメヒ前線基地は要塞都市として設計されているので、幾ら辺境の地とはいえど、大貴族の待遇となればこれぐらい普通だそうだ。
なんならフロウゼルさんの実家はかなり大きく、家の敷地面積は下手な街よりも面積が広いみたい
なので前線基地にあるフロウゼルさんの屋敷は、別荘にしても小さい方だという
貴族って凄い
そしてフロウゼルさんと一緒に居る区域は、貴族出身の人や調査隊でも幹部に就く人達が住む場所で、貴族特区というらしい。
近くには塔を中心とした重要施設や、一の壁の奥へ進む専用の通路があったりするみたい
今後の事を考えたら、基地の中に拠点となる場所が欲しかったので今回の提案はとても嬉しかったんだけど、二の壁の中でも中心に近くフロウゼルさんのような基地の偉い方が住む場所となるとどうも気が引けてしまう
ある意味、フランクさんと異世界版物件見学した後、黒の塔の一室へやって来た。
その部屋は多くの紙の束が纏めれて、チラリと見ればこの基地の物件や土地関係の書類みたいだった。
言ってしまえば市役所の住民課のようなものかな?
(そういえば、スキルのお陰で文字は見えるんだよな・・・・・・)
何気なしに書類を見たんだけど、特典の内の一つである〈空想図書館〉の効果であらゆる言語の文字は読めるみたいだ。
ただ言葉とかになると全く機能せず。絶妙に使いにくい、だったら〈翻訳〉として文字も言葉も分かるようにして欲しかった。
「では使用人の人物はどうなさいますか?ソラ殿の希望に合わせて選びますが・・・・・・」
「使用人、ですか?」
「はい、ソラ殿が不在の間、家の管理を任せる者ですね、男性や女性、また種族からご希望があれば」
簡素な作りのテーブルにフランクさんは書類一式を広げるとペンを取り出す。
「そうですね、動物が大丈夫な人がいいです。今後もしかしたら一緒に連れてくるかもしれないので」
「ふむふむ、ちなみに種族の方は?」
「狼です。この前手懐けたので今度連れてこようかなと」
狼は太郎のことではなく、夜や月の〈影狼〉のことだ。
太郎はめちゃくちゃデカいので周囲の人達が怖がるだろうし、太郎自身、人間嫌いなところがあるので、もし連れてくるのは夜か月になると思う
あと〈影狼〉に変身したシロとか
「狼ですか、凄いですね」
「僕が直接手懐けた訳じゃないんですけどね、元々飼っていた狼が連れてきたというか」
「それでもですよ。狼は非常に強力なモンスターですから、狼をテイム出来れば一人前と言われています」
フランクさんが言うように、やはり狼を仲間にするのは難しいらしい
「であれば使用人は獣人が良いかも知れませんね、もしくはエルフ族でテイマー経験者など」
「獣人とかエルフの方でテイマーが多い理由があるんですか?」
「どうでしょう?元々自然に生きる種族ですので扱いになれているのかも知れません」
獣人やエルフといった亜人種の人達は、昔からモンスターをテイムしてきた歴史があるそうなので、世界が平穏になった後も、テイムは亜人種の人たちが・・・・・・と、いつの間にか役割分担が出来ていたそうだ。
そう言うとフランクさんは席を立って、資料棚の方から何かを選別する。
「とりあえず最低限に3人は必要ですね、この中からお選びください」
「3人ですか!?」
「はい、何かおかしいでしょうか?」
?と疑問を浮かべる様子のフランクさんに思わず愕然とする。普段使わない部屋なのに3人も雇うのか、もしかしてだけど・・・・・・
「フランクさんって貴族の方だったりします?」
「えぇ、よく気が付きましたね、私はサラン公国で男爵家の出身です」
まぁ、運動も勉強もできる文武両道な時点でなんとなく察しては居たけど、フランクさんも貴族の人みたいだ。
単純に俺が使う言葉が話せるっていうから、勉強出来る人じゃないといけないんだろうけど、周囲に貴族の人多すぎじゃないか?
言っても知っているのはフロウゼルさんと今目の前に居るフランクさんの二人だけなんだけど、元々この世界で知り合いが少ないので割合的に多いはず。
自分自身、元々がこの世界の生まれじゃないので常識がないのは承知しているんだけど
平民と貴族の違いといえばいいのか
一般的な暮らしにおいて、何処か常識がズレているは貴族の特徴なんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます