第46話 基地の外に出来る街
「基地の外でも、住んでいる人が結構居るんですね」
「基地内の敷地にも限界はありますから、そこから溢れた商人達がこうやって街を作っているのです。三の壁が出来たらこの場所も壁に守られた内地となり、土地の所有権は有せますので」
フランクさんと一緒に基地の外に出来た街を探索する。
北門付近はまだ街道も整備されておらず、土煙が凄いんだけどそれでも行き交う人々は気にもとめずにそれぞれの目的地に向かって急いでいた。
「所有権ですか?」
「はい、言ってしまえば先に家を立てその付近の所有を宣言出来ます。実際にはそれらは全て調査隊が有しますが、民事では干渉しないので、彼らは先んじて建物を立てているのでしょう」
先行投資、そう言われれば凄く納得が言った。
前世で言えば大量の地下資源の眠る発展途上国に、大企業が事業を進出するみたいな感じ・・・・・・と言えば良いのだろうか
二の壁まで国がガッチガチの権利を有しているんだけど、それ以降の場所は、民間の商会が開発してもいいという事になっているそうだ。
「彼らは凄いですよ、自分たちで冒険者を呼び、民間の調査隊を結成しようとしているのですから」
「大丈夫なんですか?冒険者の取り合いになりそうですけど」
二の壁の外側にある外縁街の大通りを歩きながら、通訳のフランクさんと話す。
「大丈夫ですよ、民間だとC級冒険者までしか雇えませんから」
「そうなんですか?」
「はい、これは私の祖国であるサラン公国を始めとした多くの国で制定されている法律ですので」
フランクさん曰く、A級やB級の冒険者は戦力の観点から軍の人員として組み込まれるそうだ。
それでも、冒険者の人たちが強制的に軍で働かされると言うわけではなく、その籍を国に置くという形になるらしい
ただ戦争においては、国の防衛義務などがあるそうで、その制約は多いんだけど、一部税が免除されたり優遇措置もあるみたい
なのでB級以上の冒険者は公務員みたいな存在だそうだ。
そしてそれら高位の冒険者を私用で雇うことは禁止されており、B級以上のクエストも国の許可が必要だそうで
冒険者の奪い合いには発展しない、とフランクさんは語る。
アルメヒ外縁街はサンレーア王国から運ばれる補給物資が南門に集積されるのでその都合上、前線基地の南側から発展しているようだ。
「南門付近ってさっきよりも人が多いですね」
「物、人の大半が南門を通りますからね、倉庫も多いことから商人達も基地の南側を重点的に開発しているようです」
俺とフランクさんで北から東側を通り、そのまま南門までやってきたんだけど、南門に近づくにつれて街が発展していく様子が面白い
まるで街の発展の歴史を見ているかのようで、北門付近は未だ閑散とした様子なんだけど、東門まで行けばファンタジー世界にありそうな一般的な街並み
そして南門付近となれば、地面には石畳が敷かれ始めていて、二階建てや三階建ての建物が多くなってくる。
みんな三の壁が建設される予定地の内側に、所狭しと建物が乱立していてまるで摩天楼の様だ。
他にも、二階の窓から建物と建物を伝うように紐が繋がれ、そこにはお店の広告バナーのような物が掲げられている。
ある意味この乱雑さが美しいとさえ思える街の景観だ。
(うわっ、すっごい大胆な格好)
お祭りなんじゃないかと思うぐらい、外縁街の南大通り騒がしく活気に溢れていた。
どれもが新鮮な光景を目まぐるしく観察していたら、丁度路地にあたる場所に胸元を開けた大胆な格好をした妙齢の女性が立っていた。
「気になりますか?」
思わず目を奪われてしまっていたら、隣を歩いていたフランクさんが耳元で囁くように小声でそう聞いてきた。
「まぁ、自分も男なので気にならないと言えば嘘になりますが・・・・・・」
路地に置いてある木箱の腰を下ろし、その長い足を組んで煙管を片手に、煙を蒸す女性の姿はどこか様になる
昼間ではあるんだけど、その通りだけは妙に薄暗いというか、妖しさと不気味さが入り混じった場所だ。
「我々も男ですからね、この様に規模が大きくなればこの手の商売は増えますし、この色街通りが出来る前にも、前線基地に定期的に娼婦を呼んだりしていましたよ」
フランクさん曰く、娼館が建ち並ぶ色街はしっかり管理をすれば治安の向上に寄与するそうだ。
やはり営みという観点で、長期的娯楽がない場所に居ると人間誰しもストレスが溜まるのは当然で、娼館の他にも賭場なども幾つかあるそうだ。
「ただこの場所でも娼館と賭場は許可制になります。この色街は前線基地で初めて営業が許可された場所ですね、今後は規模の拡張と共に増えると思います」
実際に、内地に住む調査隊員の男性も夜な夜なこの色街に通っているそうだ。
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