第42話 闇夜の暗殺者?

「取り敢えずお前達の家を作らなきゃな」

「わぅ!」


 ありがとうございます!と言った様子で礼儀正しく、ぺこりとお辞儀をする影狼の二匹に思わず驚いてしまう。


 ・・・・・・太郎、何をやったの?


 彼らが見つめる視線の先には、大きくあくびをしてお花畑の上で昼寝をしている太郎が居た。


「取り敢えず今日は簡易的なお家かな?今後ここを家畜小屋にしたいし」


 将来的にはこの影狼の二匹を室内で飼いたいと思っている。


 ただ家は一日そこらでは出来ないので、家が出来るまでの間、この二匹が住む簡易的なお家を作ろうと思ったのだ。


 拠点中央にある小屋から南側に〈影狼〉達のお家と将来的に畜産もやってみたいので生い茂る花々をむしり取って土地を切り開くようにする。


 本当は花の生えていない東側につくりたかったんだけど、先日作った水路が拠点の北から南東にかけて伸びているので〈影狼〉之お家が丁度水路を通していつでも水を飲める様にしたかった。


「お手っ!」

「わん!」


 二匹の影狼は、それぞれオスとメスに分かれていて、多分夫婦だと思われる。


 元気ではあるんだけど、二匹ともちょっと痩せ気味で自然の厳しさを感じる。


 黒い毛並みを持つ〈影狼〉は、B級に位置する狼系のモンスターだ。


 つまりはアルメヒの調査隊を襲った一頭身の鳥型モンスター〈ボボス〉と同ランクではあるんだけど、〈影狼〉はこの巨樹の森に住んでいる。


 しかも巨樹の森の中でも比較的安全なこの一帯が太郎の縄張りになってしまったので、特A級モンスターが住む巨樹の森の西側に生息域を移動したと思われる。


 元々巨樹の森でも〈影狼〉は強い方ではなかったので、食料を調達するのも難しい・・・・・・その多くは巨樹の森を離れて、比較的モンスターが弱い南方へ移動したみたい


 ただ


(巨樹の森の動物達、お肉美味しいからなぁ)


 どうも巨樹の森に住む動物は、他の場所に住んでいる動物よりもお肉が柔らかく美味しい


 野生の動物でも臭みが少なく、味付けも塩胡椒だけでも充分って言った感じ


 多分、この森の植物を食べているからかも?


 なので危険を冒してもこの森に残るモンスターは多い


「夜、月よろしくね!」

「「わん!」」


 二匹の影狼のオスを夜、メスを月という名前にした。


 二匹とも賢く、お手やおすわりを一回で覚え、トイレもちゃんと特定の場所でやるという優秀っぷり


「取ってこーい!」


 以前太郎が自作したフリスビーを使って投げてみれば元気よく駆け出していく


 流石に太郎のような木を足場にした立体機動はしないけど、〈影狼〉の固有魔法である〈影縫い〉を使ってフリスビーを追いかけている。


「ん!」

「うわっ!?」


 ドロン!と急に現れ、後ろから抱きついてきたのはその〈影縫い〉を使ったシロだった。


 夜と月が持つ固有魔法〈影縫い〉は影や闇に潜み、空間を移動するという特殊な魔法だ。


 言ってしまえば、影があるところが水たまりみたいになっていて、そこに沈んでまた違う影に瞬時に移動できる。


 コレが影狼の最大の特徴で、生半可な攻撃が効かない強者相手には逃走として使えるし、格下相手なら絶対に逃さない優れた追跡魔法にもなる。


 暗闇の多い夜間とかは特に強力だ。


 なので、図鑑で影狼は別名【闇夜の暗殺者】と随分と中二病チックな二つ名があるんだけど、事実、暗闇だと無制限に移動できるのでかなり凄い魔法なのだ。


 モンスターの等級ではB級なんだけど、この固有魔法の強力さから、被害の多さで言えば下手なA級モンスターを上回っていたみたい


 ただ影に潜んだり、移動すると魔力は結構持っていかれるみたいなので、夜と月は余り多用することは出来ないみたいだけど・・・・・・


「もう、驚かすなよ」

「ん~」


 ただそんな欠点も魔力の多いシロなら長時間使えて、そこから導き出される答えは、こうやって何度も俺の背後を取って驚かせようとすることだ。


 アイスブルーの髪をわしゃわしゃと手を広げて掻き乱せば、気持ちよさそうに目を細める。


 影狼をコピーしてから、余計にスキンシップが多くなった気がする。


 ・・・・・・影狼をコピーしてから性格が犬よりになったとか?


 やたら俺の身体の匂いを嗅いでくる回数が増えた気がする。


 ・・・・・・臭くないよな?


 そう思いながら汗臭くないか確認するけど、多分大丈夫、毎日水浴びしているし


 そんな事を思っていると


 あ、昼寝してた太郎がいつの間にか居なくなってる。


 そう思い、少しその場で待っていると


「ワン!」


 夜と月を引き連れて、誇らしげにフリスビーを口に加える太郎が森の奥からやって来たのであった。


 太郎、お前もやりたかったのね・・・・・・

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