第41話 3匹のわんこ?
「……太郎?」
「わふ」
特に何も無い平和な一日、何時ものように太郎が狩りへ出かけて帰ってきたのを出迎えようとすれば、家の入口には黒い狼が行儀よく、三匹が横一列にお座りをしていた。
ハッハッと息を切らし、舌をだらんと垂らしながらキラキラとした目でこちらを見ている……
自分の横に座った太郎を見てみると、太郎自身も困り顔の様子
どうしたんだろう?
見た感じ太郎の強さに惚れたとか?
太郎の種族を調べる際に、色々と狼について学んだんだけど、狼は誇り高く警戒深い
テイム出来るモンスターの中ではテイムに難しい部類らしく、その戦闘力から運動能力の高さ故、様々な方法でテイムの研究がされた歴史があるそうだ。
そして黒い毛並みを持つ狼について、俺はよく知っている。
かれらは〈
「ところで、シロ……なんで君もそこに並んでいるのかな?」
「ん!」
三匹いる〈影狼〉の中で、1番右端に座るやたら尻尾をブンブン振り回す狼……〈影狼〉に変身したシロを呼び戻す。
シロはよくぞ気づいた!といった満足げな様子で俺の元までやって来て、太郎とは反対側の所に座る。
三匹の〈影狼〉は、全員同じような顔をしているんだけど、その中で一匹だけ銀色の瞳をした狼が居た。
漆黒の毛並みを持つ〈影狼〉は黄土色の瞳をしている。実際、シロを除いた残り二匹の〈影狼〉は図鑑の通りの瞳の色をしているので間違いないと思う
(シロは気がついていないけど、今後の課題かなぁ)
基本的にシロの変身は完璧なんだけど、どうも本人が油断をしていると瞳の色だけが変わらないという事が多い
太郎が黄金の瞳をしているなら、シロは対象的な銀の綺麗な瞳をしていて、とても美しい
神秘的とさえ思えるけど、銀の瞳を持つ生物って殆ど居ない
アルメヒ前線基地にいる人々を見ても、特徴的な瞳の色をした人はそう多くないし
獣人族やエルフ族と思われる人達は青だったり緑だったりもするけど、フロウゼルさんら人間族は総じて黒に近い瞳の色をしていた。
(シロの特殊体質なんだろうか?)
シロも太郎も、暗闇に潜む猫のように闇夜の時でも、その瞳は美しく光り輝く
瞳というのは、魔法や魔術的には重要でパーツの一つで、代表的な物で言えば巨大なヘビのモンスター〈バジリスク〉の石化の魔眼や、淫魔で有名な〈サキュバス〉の魅了の魔眼がこれにあたる。
実際に魔眼研究は、数多く存在する魔法研究の中でも結構規模が大きな部類で、魔眼について多くの本が〈空想図書館〉の中に存在する。
それほどまでに、魔眼と呼ばれる物は強力で魅力的な物ということになる。
結局何が言いたいかというと、特殊な瞳の色を持つ者は普通とは何かが違う特別な意味があるという事
その特別な意味というのは、生物によって千差万別で、単純に使用する魔法の威力を上げたり、未来を見通したりするそうだ。
なので、シロは意識をしないと瞳の色が変わらないんだけど、その銀の瞳が特別な意味を持つのなら、無理に変えなくてもいいんじゃないかと悩んでいた。
「でもどうするかねぇ、家は狭いし」
小さな家の入口で一人と四匹が一同に介するこの状況
期待な面持ちでこちらを見てくるので、このまま突き返すのも可哀想だと思う
(太郎が大きいんだよなぁ)
元々、狩りをする人が長期間森に籠もるために作られたと思われるこの家は結構大きく、しっかりとした作りになっている。
ただ家に住むのは俺とシロと太郎の三人
シロは基本的に人型で生活をするので、元の種族であるスライムに戻ってくれとも言い難いし、そこまでやって欲しくない
太郎は全高が人の背丈に迫るほどの巨体で、部屋の3割近くを占拠している。
しかも、現在進行形で成長中だ。
なのでそこから大型犬よりも一回り大きい〈影狼〉の二匹を家で飼うのは正直難しい
(家も一から作り直さないとかなぁ)
全員が余裕を持って住めるぐらいの広さは欲しい
土地は余ってるしね
向日葵は基本的に一人で居るのが好きなようなので、態々家に入れても個室が必要だろう、単純に眩しいっていうのもあるけど
もしかしたら今後こうやって住居人が増えるかもしれないし、フロウゼルさん達との交流もあって、家具が増え始めて手狭になっているのも事実
家、作らないとなぁ・・・・・・
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