第37話 拾ったスライムが美少女に変身した件について

「おーい、シロ~ご飯だぞ」


 昨日家の近くで拾った真っ白なスライム


 名前はシンプルにシロと名付けた。


「美味しいか、そうかそうか」


 外で遊んでいたシロは、俺のご飯の声に反応して全身を使いコロコロ転がりながらやって来て、そのままお皿に盛り付けられた野菜をもしゃもしゃと食べる。


 スライムって知性が無いモンスターだと思っていたんだけど、目の前で美味しそうに野菜を食べるシロは俺の言葉がはっきり分かるようだ。


 シロは草食モンスターで、太郎が狩ってきた動物の肉には見向きもしない


 お気に入りはマオという小松菜みたいな野菜で、スライムの特性なのかよく水を飲む


 なので気がついたら一人で川に行っては水浴びをしていたりと結構アグレッシブで綺麗好きなスライムだ。


「あの後、向日葵は何もしてこないし・・・・・・大丈夫かな?」


 昨日、あの時はまだ黒かったシロを抱えて家に戻ってきた瞬間、いつもはおとなしい向日葵が暴れまわり、シロを何回も突っついた。


 シロはスライムだから突っつかれても多分大丈夫だろうけど、向日葵が突っついたせいで、黒糖わらび餅スライムが牛乳寒天スライムになってしまった。


 ただシロが白いスライムになってからは、向日葵が特に気にする様子もなく、畑の付近で一緒に日光浴をしていたりする。


 お互い仲良くなっていいんだけどさ


「あ!こらこら、それは食べ物じゃないぞ」


 ただシロにも困った癖がある。


 それは先日フロウゼルさんから貰った三つの聖遺物


 これらはある程度綺麗にされては居たんだけど、貰った聖遺物はどれも複雑な形状をしているので、手が届きにくい隙間とかには血痕が付着していたりする。


 感染症とかが怖いので、シロが届かない場所に置いてあるんだけど聖遺物を食べようとする悪癖があるのだ。


 太郎と向日葵は聖遺物に対して特に思い入れが無さそうなので大丈夫だと思うんだけど・・・・・・


 何故かシロだけが貰った聖遺物に対して強い興味があるようだった。


「こら、杖を食べないの」


〈白夜之聖杖〉の先端をもぐもぐ咀嚼していたシロを引っ剥がす。


「ん?なんか綺麗になっているような」


 杖の先端部分は黒と白の二又が螺旋状に交差している複雑な造形をしていて、汚れも付着しやすい


 なので手入れには結構時間がかかっていたんだけど、杖を食べていたシロを剥がすと、食べていた部分が新品の様に綺麗になっていた。


「もしかして綺麗にしようとしてくれた?」


 もしかしたらシロは善意で聖遺物を食べようとしていたのかもしれない


 汚れを食べたりして、物を綺麗にする能力があるのかな?そう思えば態々止めてしまった申し訳ないと思う


「シロ、ありが――――って、誰!?」

「ンーーーーーー♡」


 お礼を言おうとシロの方を向こうとした瞬間、その視線の先には真っ白なプルプルのスライムではなく、


「おまっ、シロか!?」

「ン!」


 サラッとしたアイスブルーの青みがかった髪が顔にかかり、シロからは何やら爽やかな良い匂いがする。


 肌もスベスベで人の温もりが心地よい・・・・・・じゃなくて!


「ちょ、離してっ!?――――結構力強いな!?」

「ンー!」


 引き剥がそうにもびくとも動かない


 何故か人の姿になってしまったシロは、白い肌に肩まで伸びるアイスブルーの髪の毛、そして太郎と対象的な銀色の綺麗な瞳


 フロウゼルさんやアーシェさんもとびっきりの美女美少女だったんだけど、人型のシロはそれを優に超えていた。


 シロの見た目こそ、ロシア系のクールな美少女って感じがするんだけど、性格は甘えん坊な子供って感じ


 しかも力がめっちゃ強い、俺がマウントを取られた状態っていうのもあるんだけど、どうしたらその細腕からそんな力が出るのか謎だ。


「太郎、助けて!」


 このままでは何かとマズイ!と思い、部屋の隅でぼーっと俺とシロの一部始終を見ていた太郎がやれやれ、と言った様子でこちらへやってくる。


「わう」

「ん!?」


 俺とシロの元まで太郎はやってくると、俺に抱きついているシロの右ふくらはぎに軽く噛みつく


 すると人型シロは、その原型を留めることが出来ずに、みるみると元の白いスライムの形態に戻っていった。


「はぁ、はぁ・・・・・・なんだったんだ一体」


 騒動の発端であるシロは気を失っているのか、ピクリとも動かない


「殺してないよね?」

「わん」


 太郎は軽く噛んだだけなので、多分致命傷にはなっていないとは思う


 一応太郎に確認を取ると、大丈夫、と言った様子で俺の背後に回ってきて腰を下ろした。


 もたれ掛かれって?


 今日はずっとシロと一緒に居たので、太郎も少し寂しかったのかもしれない


 俺は太郎のお腹周りのもふもふな毛並みを堪能しつつ、シロが起きるのを待つことにした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る