第36話 雷雨の日に森へ堕ちた邪神②

 動く気配のない真っ黒いスライムを両手に抱え帰路につく


 その落ちていた真っ黒いスライムは、俺が抱えても特に動く様子はなく手にはひんやりとした冷たさに、もちっとした柔らかな感触がなんか気持ちいい


 でっかい黒糖のわらび餅みたいだ。


 半透明な黒色といい、プルプルとした質感も相まって何処か前世で食べたお菓子を思い出した。


 そして・・・・・・


「ど、どうした?」


 家に到着して、不思議な木の範囲内に入った瞬間


 それまで動く気配の無かったスライムが急にブルブル震えだしたのだ。


 いきなりの反応に、びっくりして思わず地面に落としそうになるのをギリギリで耐える。


 危ない


「ん?向日葵、どうしたの?」


 そんなやり取りをしていたら、いつの間にか俺の目の前に、相変わらず金ピカに輝く黄金の鶏の向日葵がこちらをジーッと見ていた。


「これ食べ物じゃないよ?どうしたの?」


 向日葵の視線の先には、俺が両手に抱える黒スライムがいる。


 もしかして自分の餌と勘違いしているのかな?


 そんな事を思っていたけど、いつもは猫のようにのんびりと自由気ままに生活している向日葵と違い、何やら真剣な様子?


 もしかして向日葵の天敵とか?


 そう思っていると・・・・・・


「あ」


 向日葵が急にその黄金の翼を羽ばたかせてこちらに突貫してくる。


 バサバサと俺の胸に飛びつくようにやってきて、慌てていたら向日葵は自らのクチバシを黒スライムに突き刺したのだ。


 向日葵を引き剥がそうにも結構力が強い


 なんなら先日戦闘訓練をしたフロウゼルさん以上の力の強さだ。


 やはり、向日葵の天敵なのかな?と思いつつ、黒スライムを見てみると・・・・・・


「ん?白くなってる?」


 あの黒糖のわらび餅の中身みたいに黒かったスライムは、向日葵に突っつかれたせいでなんか白く変色している。


 もしかして死んだ?と思うほど、前世で言うところの珊瑚の白化現象みたいに真っ白くなっていた。


 黒糖わらび餅が次は牛乳寒天になってしまった・・・・・・


 何故かこのスライムを見ていると、どうしてもお菓子に意識を持ってかれそうになる。


 うーん、謎だ。







「お、気が付いたか」


 俺は現在、せっかく魔法の杖を入手したので魔法の勉強をしているところだった。


〈カリエザ魔法学園・火魔法一年〉


 カリエザ魔法学園は本を見る限り結構有名な魔法学校の一つ


 偶然読んだことのあるこの世界の娯楽本の中では、カリエザ魔法学園を舞台にした学園モノの小説があるし


 様々な魔法関連の書物を執筆した作者の殆どが、このカリエザ魔法学園を卒業しているみたいだ。


 前世で言えばハーバード大学とかオックスフォード大学


 日本で言えば東大みたいな?


 言ってしまえば、カリエザ魔法学園は魔法学校の名門校のようだ。


 実際に出向いて学んでみたいけど、地図を見るにこの神の地と呼ばれる北サンレーア地方からはるか南東にあるようで


 直接行って学ぶのは不可能だと思われるので、その学園で使われた初等部の学生が使う教科書を使って学ぶことにした。


 その教科書はイラスト付きでわかりやすく、QRコードのような魔法陣から立体映像が飛び出して、まさかの音声付きで解説してくれるぐらいだ。


 飛び出す絵本、本当にあったんだ・・・・・・


 さすが魔法学校の名門って感じ


 そんな感動を覚えつつ


 向日葵によって白く変色してしまったスライムが目を覚ましたようだ。


 目を覚ましたと言っても、実際に目があるわけじゃなく、プルプルと動きキョロキョロと周りを観察する様な仕草をしていたからだ。


「お、こいつも人懐っこいな」


 太郎は部屋の隅で骨を齧ってのんびりしている。


 白スライムと一番距離が近かったのは俺だったので、自然と白スライムは俺に近づいてきた。


 まるで雛が最初に見た生き物を親と認識するように


 すりすりと寄ってくる仕草が可愛らしい








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