第23話 初めての異世界交流④
「私達の目的はププ草、及び【アスラー伝記】に記載されている薬草や鉱石、聖遺物を回収することです。」
「アスラー伝記、ですか?」
「はい、私たちはその書物と幾つかの文献を元にこの神の地へやってきました」
ラロッソさんの説明では、この世界には大昔にこの世界を支配していた旧人類と、ラロッソさんたち現代を生きる新人類の二種類があるそうだ。
そしてアスラー伝記を書いた著者、冒険者アスラーは新人類最高峰と謳われる人物で、その人が書いた伝記には神の地に纏わる夢物語のような事が書かれていてそうだ。
ただそんな夢物語のような話でも、アスラー伝記の眉唾もの話が実際に存在した事を証明するかのように、後年発掘された古い文献達がその夢物語を保証する。
飲めば超人的な力を手に入れられる命の水、万病に効く薬
それらがこの神の地に存在すると言われ、ラロッソさんたちはこれらを入手、調査するためにこの地へやってきたそうだ。
「ちなみにラロッソさん達、調査隊の目標は?」
「私達の目的は神の地の調査ではありますが、大きな目標として〈蘇生薬〉の主原料であるププ草の採取、及び群生地の発見、あとはB級以上の聖遺物になります」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(あっぶねーーー!)
やはりこの世界では蘇生薬はかなりの価値があるようだ。
亡くなった人達には申し訳ないけど、ラロッソさんの反応を見るに、蘇生薬を持ってこなくて正解だったと思う
「他にも、〈再生薬〉の原材料を入手することですね、こちらの詳細は文献にも書いていないので、発見が難しいと思われますが・・・・・・」
ピンポイントで突いてくるラロッソさんの言葉に、心臓を槍で突かれるような衝撃を受ける。
なるべく疑われないように努力はしているけど、内心では大量の冷や汗をかいていた。
フェイスガード付けてて良かった・・・・・・
顔を覆うように黒いフェイスガードを付けているので、多分表情には現れていないはず。
アーシェさんに再生薬使っちゃったけど大丈夫かな?
「なるほど」
取り敢えず疑われないように、注意しながら無難な言葉を返す。
聖遺物は分からないけど、蘇生薬と再生薬については見に覚えがありすぎてボロが出そうだった。
「聖遺物とはどこに?」
「聖遺物は巨樹の森の先、マガス山脈の遺跡に存在すると言われています。ほら、塔の窓から見えるあの山です」
そう言ってラロッソさんが指を差すのは自分の家からすぐ北にある山だった。
(あの山に不思議アイテムが存在するのか・・・・・・)
聖遺物は人類では再現不可能な、不思議な効果を持ったアイテムの事らしい
雷鳴を呼び起こす剣から、魔力で練られた矢を生成し射る弓
無限に紅茶を生成するティーポッドに、ずっと高温を発し続ける不思議な箱
それらが聖遺物と言われ、これらには希少度や能力の強さからG~S級に分かれた物が存在する。
「冒険者アスラーが神の地から持ってきた【時之王錫】は世界で3つしかないとされるS級聖遺物の内の一つです。時之王錫は使用者の魔力を吸い取り、その吸い取った魔力分、対象の時を止めます」
「それはすごい、さすがS級聖遺物ですね」
「はい、巨樹の森の奥に聳えるマガス山脈では、それら聖遺物が大量に存在すると言われています」
ラロッソさんが話したアスラーが持ち帰った【時之王錫】もマガス山脈で入手したと言われている。
(家に帰ったら山に行ってみようかな?)
巨樹の森はその言葉の通り、多分自分の拠点がある森のことだろう
そこにある蘇生薬の原材料のププ草も生えているし、何なら家の裏手に群生地が存在する。
そして山に関しては巨樹の森に住むモンスター以上に強力なので、余り調査したことはないけど多分太郎がいれば大丈夫だと思う
良いことを聞いた。そう思い相槌を打ちながら話を聞いていく
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