第22話 初めての異世界交流③
ドサッ!
「・・・・・・これは?」
「これはアーシェさんを助けたときに回収した仲間の遺品」
「そうですか・・・・・・」
部屋の中心に置かれているテーブル、それぞれ椅子に座り、話を始める。
赤髪の少女、アーシェさんは俺の横、そしてアーシェと抱擁を交わしていた大柄な金髪の女性、フロウゼルさんは向かい側の斜め左側に座る。
唯一会話が成立する考古学者の男性であるラロッソさんが正面に座り話が始まった。
そして俺が最初にテーブルの上に置いたのは、金属で出来たプレート
多分この世界でもこのプレートは亡くなった人の身分証明証みたいに、ドッグタグ的な意味合いがあると思う
話を円滑にするために、これらドッグタグは袋を別にして回収していた。
「一応このプレートを見つけたのは21個、遺体の破損が酷かったりしたから取りこぼしがあるかもだけど」
「いえ、隊が壊滅したと報告を聞いた時に、私たちは覚悟していましたので、こうやって回収できただけでも良かったのでしょう・・・・・・」
プレートの入った小袋を広げ、様々な金属で出来たプレートが重力によってガシャリとテーブルの上に広がった。
多分この部屋の中でも一番偉いと思われるフロウゼルさんは、その中にあるプレートの一つを手に取り、どこか寂しそうな目で眺めていた。
『現場はどのような感じでしたか?』
フロウゼルさんはラロッソさんを介して俺に質問する。
どのような感じだったか・・・・・・
あの時、唯一の生き残りであるアーシェさんが意識を失っていて、その現場を見たのは俺だけだ。
(言っていいのかなぁ・・・・・・)
虐殺現場でした・・・・・・とは言いにくい
どうも俺は勘違いしていたようで、あの時、アーシェさんを含め襲われていた人達は、新人冒険者の集団か何かかと思っていたんだけど
この基地を案内させて貰い、様々な人達を見てきて分かったことは、どうも彼らは調査隊のような類だったと思われる。
基地の中で行われている訓練の風景
彼らが装備している武器や防具、そして身に纏うオーラがどうも新人冒険者とは思えない
それ相応の経験を積んだ余裕があるというか
言葉に言い表せないような空気が基地内には広がっていた。
ただ
『虐殺、でしたね』
ラロッソさんを介して正直に答える。
翻訳役のラロッソさんも特に驚いた様子はない
最初にラロッソさんは壊滅した報告を聞いたという事を言っていたので、既に分かっていたのかもしれない
『そうでしたか・・・・・・』
フロウゼルさんは驚くわけでも、悲しむわけでもなく、ただ事実を身体に染み込ませるように目を閉じそう短く喋った。
「それで、あなた達は何故このような場所へ?」
取り敢えず持ってきた遺品をフロウゼルさん達に返却し、少ししんみりした空気を変えるように俺は質問をする。
「このような場所とは?」
ラロッソさんは何故そんな事を?と聞いた様子で俺に聞き返す。
「正直言って、あなた達はこの周辺に住むモンスターには敵わない、それこそ亡くなった人達と同じ運命を辿ると思う」
フロウゼルさんは横に座るアーシェさんに比べて強いと思われるが、森に住むモンスターを相手するには実力不足は否めない
多分基地の中でも、有数の実力者であるフロウゼルさんでこれなのだ。
考古学者のラロッソさんを始めとした基地内で会った人達では到底森へ侵入するのは危険だ。
何故、自殺行為のような事をするのか、単純にそう思ったからだ。
「ソラ様は神の地を知っていますか?」
「いえ」
「神の地とは、ここ周辺の地域一帯を指し、希少な薬草や鉱石が大量に眠っているとされています」
ラロッソさんが語り始めたのは、ここ周辺がどのような場所か、何故ラロッソさん達が死を覚悟して森へ入るのか、といった話だった。
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