第20話 初めての異世界交流

「Voeiw mozivvka!?」


 基地が見えた時点でそのまま帰ろうと思ったんだけど、持ってきた遺品も大量で、しかも結構重たいので自分が基地の側まで持っていったほうが良さそうだ。


 今までの移動と違い、基地が見えた段階で赤髪の少女を先頭で歩かせる。


 太郎は森の近くでお留守番、どうも太郎は他人と接するのが嫌いなようで、人が沢山いる基地へあまり近寄りたがらない


 無理に連れても可哀想なので、太郎は丁度基地が見渡せる場所に陣取って、じーっとこちらを見ていた。


「Seollleihi?」

「%0a3k la;」


 赤髪の少女はこちらの意図を汲み取ったのか、前を歩き、基地の連絡橋に駐在している守衛に声を掛けた。


 守衛の男性は赤髪の少女に対して、酷く驚いた様子だったけど再会を喜ぶようにしているので問題は無さそう


 そして少女の後ろで待機していた俺を確認して、守衛の人たちは全員こちらを不審そうな目で見るけど、代わりに赤髪の少女が何やら事情説明をしてくれているっぽい


「木造の橋か、襲撃されたら焼き落とすのかな?」


 無事、俺に対しての嫌疑は晴れたようで、赤髪の少女と一緒に基地の中へ案内される。


 基地の外壁はコンクリートのようなもので作られており、微かに見える基地内部も似たような構造だ。


 ただ基地へ入る為の空堀を跨いだ橋は、簡易的な木造の橋だった。


 昔、漫画だか小説だかで、万が一敵が攻めてきた場合に橋を落として侵攻を防ぐみたいな事を聞いたことがあるから、多分この橋もそうなんだろうか?


 先程と違い、赤髪の少女は俺の隣を歩き、その前後には基地を護る守衛が囲んでいる。


 大小二つの門を通過し、基地の中へ入ってみればそこはちょっとした街のように幾つかの建物が並んでいた。


 基地の外には広大な畑が作られていたけど、基地の中にも幾つか畑が設置されているようで、本格的に籠城を目的とした作りになっているのかな?


 基地の中心へ向かうほど、建てられている建物は大きい


 他にも訓練場のような場所や、馬や人が乗れるサイズのトカゲ?のような動物の厩舎があったり


 市場のような場所には、商人と思われる人たちが出入りしていた。


(すごいなー、基地というより街に近いかもしれない)


 建物などを見た感じ、この基地が建設されたのは最近だと思われるけど、規模で言えば俺が知っている村とは比べものにならない


 基地の中に住んでいる人も結構な数がいて、人種も様々だ。


 赤髪の少女のようなヨーロッパ系の人間から、アジア系、アラブ系といった見た目の人も何人か見受けられ


 ファンタジー世界の醍醐味の一つである。耳がピンと立ち、長く先が尖った美しい顔立ちのエルフや、ピョコンと猫耳を生やした獣人など


 俺は今、過去一ファンタジーの世界観を実感していると言っても過言では無かった。


「獣人ってそういうタイプなんだ・・・・・・」


 読む作品によっては獣人は、人間と姿形がそっくりで、犬や猫を模した耳と尻尾があるタイプと


 全身毛むくじゃらで、まさに動物が二足歩行に進化したタイプがある。


 この世界はどうやら前者のほうらしい


「ただなぁ・・・・・・」


 じーーーーー


(すっごい見られている)


 基地の内部へと誘導されているんだけど、行き交う人みんなにずっと見られ続けているので少し居心地が悪い


 物心ついた頃には既に村で住めなくなっていたので、対人コミュニケーションの練度が不足しているのは否めない


 しかも言葉が分からないのが余計に精神に負荷が掛かる。


 それでも知らない人間がバカでかい荷物を持ってきたら、そりゃ目立つかと自分自身で納得して無視する事に決めた。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る