第18話 生き残った女冒険者③

「後少しかな?」


 川沿いを歩きながら昨日、助けた女性から聞き出した拠点と思われる場所へ向かう。


 背中には茶色い背負い袋がパンパンに膨れ上がり、歩く度にガチャガチャと音が鳴る。


(一個ぐらいくれないかなぁ・・・・・・)


 袋に入れているのは、女性を助けた現場で亡くなっていた人たちの遺品だ。


 殆どの道具がボボスに襲われた際に、見るも無惨に破損していたんだけど、その中には状態の良い装備やアイテムが残っていた。


 個人的な価値観としては、死んだ人間の物を拾っても問題は無いと思うけど、万が一所有権が血縁者関係に移ったりして争いごとになったら面倒なので止めておいた。


 心象も良くないしね。


「UHhhhnnn......」


 後ろを歩くのは昨日助けた赤髪の女の子。


 緋色の美しい髪の毛は腰まで伸びて、それをゆるく纏めている。


 その白い肌と大きなパッチリ目、非常に整っている顔立ちなんだけど、頬は汚れて髪もボサボサ。


 寝付けなかったのか目には隈も出来ていて、その美しい顔立ちが台無しと言ったところ。


 川で水浴びをしたとはいえ臭いもキツイし。


 相手は女性だからそんなこと言わないけど。


 ただそれでも冒険者としての矜持があるのかふらふらな足取りではあるけど、その歩みは遅くない。


「太郎、近くに敵はいるかな?」

「わん」


 横を歩く太郎に近くに敵が居るか聞いてみるが、見た感じ周囲に敵影は無さそうだ。


「よし、一旦休憩するか!」


 ドスンと袋を置いて手頃な大きさの石に腰を下ろす。


「joeirr?」


 休憩?と言った様子でこちらを見てくるが、そうだと頷けば赤髪の女の子も後ろから倒れるように腰を下ろした。


(うーん、昼過ぎには到着できるかな?)


 昨日キャンプを設置した場所から、彼女の拠点と思われる場所は直線距離で大体5キロ程度。


 俺と太郎だけなら一時間もしないで到着出来るが、森を進むとなると、一緒に歩いている彼女を守れない可能性があるので少し遠回りしながら進んでいる。


「太郎、やっぱダメ?」

「がぅ!」


 当然!と言わんばかりに俺のお願いに太郎は首を横にふる。


(うーん、ここまで強情なのも珍しい)


 当初の予定としては、助けた女の子を太郎に乗せて素早く移動するつもりだった。


 ただ太郎は今までに見たこと無いぐらい嫌な顔をして、挙句の果てには女の子に向かって吠える始末。


 一番楽なのは太郎に女の子を乗せて、俺は走って移動することなんだけど。


 太郎的には絶対ダメらしい。


「Mosjue Scmuss......」


 ある程度意思疎通が取れてきたとは言え、彼女が喋っている言葉は全然分かんない。


 頭がいい人であればなんたら方法とかで翻訳出来たりするんだろうけど、生憎俺にそんな頭脳は無い。


(ふぅ、疲れた・・・・・・とかかな?)


 ただ彼女は表情豊かなので、なんとなく思っていそうなことは分かる。


 どうも昨日の件を引きずっているのか、歩いている最中も常に周囲を警戒して余計な体力を使っている節がある。


 なので少し移動しただけで疲労困憊な様子。


 一応彼女が着ていた鎧は袋に入れて、現在ラフな格好をしてもらっているので、そこまで負担は無いと思うけど


 ・・・・・・もしかしたら到着は夕方前になるかなぁ。





「ここかな?」

「Moas! Moa#veqla!!」


 川沿いを渡り、最短距離で森を抜ける。


 太郎が近くを警戒しているので、万が一にも無いとは思うが、万全を喫して自分も警戒しておく。


 そうして進んでいくと森を抜け、周囲が開けた場所についた。


「わーお、拠点というより基地だなこりゃ」


 森を抜けた先は、見渡しの良い平原が広がっていた。


 深い谷にはエレベーターのように吊り下げられている滑車が設置され、谷底に存在する川から水を汲んだり物資を運んだりしている模様。


 どういう理屈か、コンクリートのような滑らかな石材が外壁を作り基地周辺を守っていた。


 外壁の外には数メートルの深い空堀に木の杭が建てられ、近代的な軍事基地と言った感じ。


(コレは予想外、思っていた以上に、この世界は科学技術が発展しているのかな?)


 どういう意図で設計されたのかは分からないけど、ペンタゴンのような形に外壁が囲われており。


 基地周辺で活動をしている人たちは重機のようなもので開墾をしていた。







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