第16話 生き残った女冒険者
森の中から黒煙が上がっていたので、急いで現場へ向かっていたところ。
周囲から強烈な血の臭い、人間とモンスターの叫び声や咆哮が聞こえたので不安な気持ちで現場へ向かってみると・・・・・・
「おいおい、こりゃ酷い!」
巨大な黄色いクチバシが特徴の一頭身の鳥型モンスター。
ずんぐりむっくりな見た目の割に、ギザギザに生える歯と真っ黒な目がとても不気味な姿。
そんなモンスターが何十匹と集まって人間達を襲っていた。
辺りには酷い臭いが充満し、思わず顔を顰めそうになる。
「よいしょ!」
そんな凄惨な光景を見て呆然としていたら
こちらに気がついて、突撃してきた鳥型モンスター
見た目の割に素早い動きではあるけど、太郎よりは全然遅いので捉えることが出来る。
ボコン!と上から振り下ろし、地面へ叩きつけるように殴り無力化させる。
『ギィシャアアァアァア!』
口から黒い血を吐き出しながら絶命する鳥型モンスター。
横では既に太郎も何匹か殺しており、むしゃむしゃと食べていた。
おいしいのそれ?
見た目鳥に近いから意外と美味しいかもしれない。
それはともかく。
人間側はほぼほぼ全滅状態だけど、せっかく手がかりを入れたので生き残りが居たら助けたい。
一応薬も持ってきているから何人かは助けられるかもしれないし。
『キャオオオォオ!』
仲間が倒されたのを見て、人間達を襲っていたモンスターが一斉にこちらを見て向かってくる。
「こっちへ向かってくるなら楽だな!」
拠点周辺の森に住む、危機察知能力が高いモンスターとかだと、逃げながら嫌がらせをしてくる奴もいるので向かってくる分には助かる。
「うーん死んでるかな?」
「わぅ」
襲撃場所地点には結構な数の鳥型モンスターが居たようで、多分40匹以上は居たかもしれない。
背中に鋭い棘を持ちそれを使って突進してくる奴も居た。
棘の先からは青黒い液体が出ているから毒針なのかな?
そこまで硬くないから肌に刺さんなかったけど。
新種の毒なら試して耐性を持たせておきたいところ。
多分死なないし。
それにしても。
「グロ耐性は付いていたと思ったけど、これはキツイな」
血や糞尿、獣臭といった酷い臭いが入り混じり。
モンスターに襲われていた人間の臓物があちこちに飛び散っている。
人間を食べる為、というよりは遊びで襲っていた感じがする。
どの遺体も損傷が酷く、酷いのだと原型すら留めていない、無駄に痛めつけているというか。
動物やモンスターを解体も慣れてそれなりに耐性を持っていたつもりだけど。
こうやって見ると思わず吐き気を催してしまった。
一方太郎は気にした様子はなく、美味しそうに襲ってきた鳥型モンスターを食べていた。
こんな状況でよく食べれるね。
大物というか、図太いというか。
子犬の頃からそうだったけどさ。
「うーん、この人だけかぁ」
凄惨な現場から離れて。
川の近くにキャンプを設営した。
一応、亡くなった人達は太郎が穴を掘り自分が運んで埋葬してあげた。
そのまま野ざらしにしておくのも可哀想だし。
そしてあの現場で、唯一息があった人を治療して、安全な場所に運んだ段階で夜になってしまったので、川の近くに拠点を建てて一夜を過ごすことに決めた。
といっても簡易的に家を作って焚火を設置しただけど。
それなりにサバイバル経験も積んできたので手慣れたものだ。
太郎は川に入って川魚を捕らえていた。
本当に万能狼。
「えーと、薬はっと・・・・・・」
この世界には冒険者が存在すると聞いたので、万が一接触した際に怪我していたら治療しようと再生薬の塗り薬を持ってきていた。
先程の簡易的な治療である程度の傷は治っているみたいだけど、右目が潰れて箇所はまだ治っていないのでそれを再生させてあげなきゃ行けない。
他にも色んな毒に対応した万能薬も持ってきている。
蘇生薬はバレたら騒ぎになると思って持ってきていないのだが
まさか20人近くも死んでいるとは思わなかった・・・・・・
今度から蘇生薬も持ってこよう。
「あのモンスター、ボボスって言うんだ」
彼女が目を覚ます間、焚き火の前で先程襲ってきた一頭身の鳥型モンスターを調べていた。
満天の星空を見ながら焚き火の光源に、横になってやたらこちらの顔を舐めてくる太郎のふわふわなお腹にもたれかかりながら本を読む。
中々に良いシチュエーションだ。
SNSとかあったら写真を撮って投稿したいぐらい。
そして、いつもお世話になっている生物大全を開けば先程襲ってきたモンスターを調べたら、そのモンスターの名前は〈ボボス〉言うらしい。
ボボスはB級相当の危険なモンスター。
単体ではC級下位相当みたいだけど。
集団で行動し、知能も高いので結構危ないようだ。
この付近に住むモンスターは大体D~E級相当のモンスターが多い中で、B級相当のボボスは強敵だと言える。
なので、襲われていた冒険者らしき人達がボボス敵わないのも無理もない。
いきなり序盤の森で、物語中盤~終盤に掛けて出てくるモンスターに襲われたらひとたまりもないし。
1歩間違えればクソゲー確定だ。
そんなクソゲーを彼女達はやっていたみたい。
見るからに一方的だったし。
ぱっと見だけど、冒険者は20人ぐらい居たはずだ。この世界だとそれが普通なのかな?
ゲームとかなら4人パーティーが王道だけど。
「う......ぅん.........」
「ん?起きそうかな?」
唯一の生き残りは赤い髪が特徴的な若い女性。
見た感じ俺と同じ15、6歳だと思う。
色白で鼻が高くどこか西洋人っぽい。
金属の鎧といい、くっころが似合いそうな女の子だ。
・・・・・・話が脱線した。
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