第13話 漆黒の革鎧

「おし、出来た!」


 太郎と出会う前の冬の時期から準備を始めていた防具制作。


 その中で一番大変だった胴部分が遂に完成した。


「我ながら良い出来だ」


 本来の予定では罠で捕らえた動物の毛皮を使った革鎧にする予定だったんだけど、太郎が家に来たことによってより強力なモンスターの革に変更した。


 内側に使用したのは、柔軟性のある黒い蛇型のモンスターである〈シュネイプ〉という蛇の皮を裁断して型を取り。


 衝撃や耐火性、防刃性の高い巨大ハリネズミみたいなモンスター、〈スケイルアダマン〉の革で外側を覆っている二重構造だ。


 この森に住むモンスターの特徴というか、今回使用した素材で作った防具一式は全体的に真っ黒だ。


 革鎧といってもそんなゴテゴテとした本格的な鎧は作れないのでどちらかというと厚手のコートに近い。


 参考にした資料がゴシック系に近い見た目だったのもあるかも。


 全身真っ黒なんだけど、近くで見たら〈スケイルアダマン〉小さな鱗がビッシリと揃っていて、黒い宝石が散りばめられたような光沢もあってとても綺麗。


 これに同じ素材で作った帽子や顔を覆うフェイスガードもつければ不審者の出来上がりだ。


「太郎、見た目どう?」

「わぅ?」


 ずいぶんと厨二チックな見た目になったけど、その性能はこの世界でもトップクラスだと思う。


 製作者の技量は無いが、使っている素材はA級や特A級と呼ばれる危険なモンスターの皮素材だし。


 結び糸も強靭な天然素材の〈アエの天蔓〉と呼ばれる非常に切れにくい蔓を糸代わりに使っている。


 なので見た目以上に頑丈だ。


「お前の抜けた牙が無かったら到底無理だったよ~」


 わしゃわしゃと、どうしたの?と言った様子でこちらを見る太郎の顔をもみくちゃにする。


 折角だから性能の良い防具を作ろうと思い、太郎にお願いしてこの森に住むモンスターを狩ってもらったのは良いのだが。


 村から持ってきた裁断用のハサミやナイフではびくともしなかった。


「太郎、お前って一体何者なんだろうな?」


 今回防具制作で一番活躍した。目の前に居る銀の毛並みを持つ狼。


 俺に顔をもみくちゃにされ、尻尾をブンブンと振り回す犬みたいな狼。


 太郎を始め、現在小屋でお昼寝中の黄金に輝く鶏である向日葵も、生物大全には二匹の記載は無かった。


 生物大全とは、先日ミサミサの実を調べる上で役立った植物大全の動物・モンスター版の本だ。


 太郎の場合は、近縁種が数多く存在する狼に属すると思われるので見逃しがあるかもしれないけど、黄金に輝くこれ以上にないド派手な生物の向日葵すら生物大全になかったのだ。


 未だ二匹の種族は謎のままだけど、ただ太郎から入手した乳歯?はこの森に住む強力なモンスターの皮を簡単に切り裂く。


 まるで豆腐を切っているかのように、いとも簡単に切れるので驚いたぐらいだ。


 防具制作の際に参考にした本では技術よりそれら素材を加工する道具を揃える方がはるかに難しいとあったので、太郎の牙ひとつで道具を揃える手間が省けたのは結果大助かりではあるんだけど・・・・・・


 太郎の抜け牙は今も大事に包丁代わりに使わせてもらっている。





「やっぱり少しサイズが大きいかな?」


 家の外に出て、完成した防具を試しに付けてみたところ、コートが地面スレスレでズボンもベルトを締めないとずり落ちる大きさだ。


 自分がどれだけ気絶していたかは不明だけど、見た目的に多分15歳前後。


 そうなればまだまだ身長が伸びて体格が変わる可能性もあるし。


 その度に防具を作り直すのも面倒なので、予め大きめに作ったのが少し悪かったのかもしれない。


 気持ち的には、親から勧められて入学してからサイズの合わない学生服を着て着心地が悪い感じ。


 これは流石にサイズ調整しないとだなぁ・・・・・・






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