第11話 黄金の鶏②

「目立つなぁ」

「こけー」


 俺が住む森は晴れの日でも薄暗い。


 それがもし曇りの日や雨の日となれば場所によっては松明が必要になるほどだ。


「コッコッコッ」


 いつの間にか雑草置き場に住み着いていた黄金に輝く鶏――――向日葵の名付けたその鶏は俺の周囲を歩いて辺りを照らしてくれる。


 懐中電灯代わりになるのかな?


 暗い森の中でも作業が出来るほど、向日葵の輝き具合は凄い。


 ・・・・・・さっきよりも輝いていないか?君。


 向日葵を見つけて初めての夜になるが、その輝きは日中よりもましているように感じる。


 あまりにも派手に光るので、鶏小屋が出来るまでの間は向日葵は太郎と同じ様に小屋に入れることにした。


 ただ彼女は草のベッドがお気に入りな様子だったのでどうも落ち着かない様子。


 先程から小屋の周りを行ったり来たりしている。






「でも卵美味しかったな・・・・・・」


 向日葵から貰った黄金の卵はシンプルにオムレツにして食べた。


 殻が黄金なら黄身も……と言うとそういう訳でも無く、中身は普通の黄身と白身だった。


 ふんわりと濃厚な卵本来の味が楽しめたし、久しぶりの卵料理という事もあって感動で涙が零れたほどだ。


 どうよ、私の卵は?


 まるでそんなことを語っているかの様に俺の胡坐の上に腰を下ろす向日葵。


 出会って一日目なのにこの太々しさ……太郎と同じく彼女も将来は大物になりそうだ。


 夜になって輝きが増して、胡坐に座られると少々眩しさを感じるが。


 何とも神々しい。


 向日葵を見つける前にも、鶏みたいな生物はこの森でも見たことがある。


 ただ体長は3メートルを超えていたし、その身体は強靭で毒のブレスを吐いてきたけど・・・・・・


 あの時は流石に死ぬかと思ったが別のモンスターが乱入してきて事なきを得た。


 あれは本当に危なかった・・・・・・





 家の周りは安全だけど、万が一に備えて向日葵が住む鶏小屋は小屋の直ぐ側に建てることにした。


 単純に雑草を運ぶのにも楽だしね。


 位置で言えば、家を正面から見たら右手側を囲うように畑と草木置き場、そして鶏小屋が設置される。


 更に右側に行けば研究スペースがあって、薬草の保管庫と氷室が存在する。


「うーん、どれぐらいの大きさにしようか」


 向日葵だけとなればそこまで大きく作らなくてもいいと思う。


 向日葵は活発的に動く様な鶏ではなく、普段は自分に合うベストな場所で座っている。


 俺や太郎が動物を狩りに行っている時は特に顕著だ。


 向日葵が自ら動く時は、俺が畑を弄っている時とか太郎となにやら遊んでいるときぐらい。


 ・・・・・・狼と鶏が一緒に居て大丈夫なのかな?


 食べられない?


 太郎は賢いから多分大丈夫だと思うけど。


 時には太郎のフカフカのお腹を枕に寝ている事もある。


 ただ向日葵は常時輝いているので、枕代わりになっている太郎は嫌そうだけど。


 そんな事を考えつつ。


 異世界生活で何度か改築や増築をやった経験もあってか。


 鶏小屋程度であれば様になるぐらいには作れるようになった。


「うん、いいじゃない」


 出来たのは広めの鶏小屋。


 日当たりをよくするために、拠点周辺の木を伐採してその出来た材木で向日葵の鶏小屋を建てた。


 元の草木置き場と違い、壁も設置しているので横殴りの雨風も防げるように少し丈夫に作ってある。


 向日葵は夜になると特に輝くので、その光が漏れないように気をつけて作ってみたが大丈夫そうだ。


「コケーーー!」


 バサァッ!っと言った具合に、向日葵はその黄金の羽根を目一杯広げて新築の我が家を確認する。


 すでに新しい草は鶏小屋に搬入済みだ。


 早速と言った様子で向日葵が搬入した草のベッドに飛び乗る。


「・・・・・・どう?」

「こけ」


 その座り心地を恐る恐る聞いてみるが、向日葵的には満足そうに座っているので多分大丈夫そうだった。


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