第10話 黄金の鶏

「この子知ってる?太郎」


 家のすぐ横にある雑草置き場。


 そこには肥沃な大地の栄養を吸って育った大量の草木が置かれ、天然のソファーになっていた。


 そしてそんなソファーの上に、眩いばかりに光り輝く一羽の鶏が鎮座している。


 なんで鶏?


 見た目は前世でみたことのある鶏だ。


 もしかしたら実際の鶏よりも多少大きい様な気もするが、そこまで差異は無いと思う。


 ただその羽根は黄金に輝いていた。


 なんならその鶏の後ろから後光が差してすらいる。


 意味が分からん。


 その派手な見た目の割には草のソファーの上でジッと鎮座しており、その姿はまるで巌のようだ。


 ただこちらの存在には気がついて入るようで、多少目を配ることはあれど逃げる様子もない。


(でも太郎が吠えないし、悪い子では無いんだろうけど・・・・・・)


 太郎の索敵範囲がどれだけ広いのかは知らないが。


 一緒に森を探索していると、急に太郎が立ち止まる時がある。


 その理由の殆どが、太郎が知覚する索敵範囲の中に敵対する生物が侵入した時だ。


 その際、太郎は威嚇をして追い払う。


 その威嚇で大概のモンスターは逃げていくのだが、中にはそのまま襲ってくるモンスターも居る。


 その時は太郎のおやつになるんだけど・・・・・・


 何が言いたいかと言えば、俺以上に太郎は気配を察知するのに長けていて、テリトリーに入ると瞬時に威嚇したりするのだ。


 そんな太郎が反応を示さない、寧ろ今現在目の前に知らない生物が居るのに特に気にする様子もないので、太郎としてはセーフ判定なのだろう。


 一体、太郎がどういう基準で判断しているかは分からないけど、少なくとも危険は無いはずだ。


(うーん、どうしようかコレじゃ雑草を置けなくなるし)


 畑の横に設置した雑草置き場。


 鶏がどうしたいのか分からないけど、出来ればその場から立ち退いて欲しいのが本音。


 態々遠くまで雑草を持っていくのもめんどうだし。


 ただそこがベストプレイスと言わんばかりにどこか満足げな様子。


「ごめんね、ちょっと退いてもらうよ」

「コケ?」


 取り敢えず抜いた新鮮な雑草の絨毯を作り、雑草置き場に乗っかっている鶏を運ぶ。


 おぉ、暴れないのか。


 鶏はじーっとこちらを見てくるが、特に暴れたり逃げたりする様子はない。


 その羽根はふわふわで肌触りの良いもの。


 抜けた羽根とか集めて羽毛布団とか作りたいな・・・・・・


 そうすれば睡眠の質が劇的に向上しそうだ。


 ただその道程は長くなるだろうし、この金ピカ鶏がずっとここに居てくれる保証もない。


「ん?」


 鶏を新鮮な草の絨毯に輸送したところ、当の鶏は満足している様子だった。


 そして元々置いてあった場所を見てみると、鶏と同じ金ピカの卵が一個置いてあった。


「あー、育ててたのかな?それは悪いことをしたのかも・・・・・・」


 俺はその黄金卵を手に取り、鶏の前に持ってくる。


 プイ


「あれ?要らないの?」


 黄金卵を返そうとしても受け取る様子はない、寧ろ持っていけといった様子だ。


「駄賃代わりってことかな?」


 この場所を使うから代わりに卵をあげる・・・・・・都合の良い考えかもしれないが、卵を産んだ当人が受け取らない以上そのまま放置するのも勿体ない。


「コケ」


 自分の言葉をまるで理解しているかのように返事をする鶏、うん先程暴れなかったといい自分が考えている以上に知性があるようすだった。


「卵を産んでくれるなら専用の小屋をつくるか?」


 鶏用小屋ならそこまでスペースも取らないだろうし難しくもないだろう。


 幾ら草木置き場が屋根付きとは言え、壁が無いので横からは風を受けるし、横殴りの雨だと少し不安だ。


 こうやって卵を定期的に産んでくれるなら彼女の住処も用意しても良いかもしれない。


 寧ろ産まなくても、ここに住んでくれるなら作っておこうか。

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