第8話 異世界式家庭菜園
家の補修も大体が終わり、その達成感もあって数日太郎とぼーっと過ごしていた。
太郎がいれば数分で動物を狩ってくるし、俺は近くの川から水を汲んでくるだけで〈空想図書館〉にある漫画を読んでもいいし、いい天気の日は太郎と遊んだりして過ごしていた。
「とりあえずここにするか」
村で入手した鍬を手に取り、家の近くの広場の土を耕す。
サクッと鍬の先端が刺さる。分かっては居たが土が硬くなくて良かった。
種籾は数種類の袋があったが、どれがどれなのか分からないので、適当に選んだ種の入った袋を取り出して植えてみる。
ピョコン♪
「早くね?」
縦横10メートルの面積の土を耕し、等間隔に種を植えた。
そして最後の種を植えたところで一息ついたら、一番最初に植えた場所から小さな若葉が出来ていた。
いや、本当に早い。
貴重な薬草が一週間ほどで採取出来るぐらいには成長するので、一般的な作物だともっと早いのだろうか?
取り敢えず水の入った桶を持ってきて、手ですくって畑に撒く。
畑は小屋の直ぐ側に作ることにした。
万が一動物が育てた作物を食べに来てもすぐに対応できるようにだ。
少なくとも太郎がやって来てからはこの付近にやってくる動物は居ないけど念のためだ。
そして耕した畑の隣には引っこ抜いた雑草が山盛りに積み重なっている。
10メートル四方の雑草を引っこ抜いただけなのに、異世界産の雑草は逞しい。
見た目以上に地面に張っている根は強靭で中々に苦労した。
ただここまで成長しているとなると、この森の土壌は農業に適しているかもしれない。
ププ草を始めとした成長が遅いと言われる薬草類が結構なスピードで育つので、もしかしたら作物の成長はもっと早いかもしれない。
数日で収穫できれば・・・・・・いいなぁ。
「・・・・・・本当に出来ちゃってるよ」
次の日、朝一に畑の様子を見てみたらナスの様な野菜が生っていた。
形はナスだが表面はキュウリみたいにデコボコしている。
なんとなく浅漬けにして食べたい野菜だ。
取り敢えず実った野菜は片っ端から採取していく。
太郎は頭に籠を乗せているのでその上に入れていく。
「全部食べれるかな?」
太郎の頭に乗せていた籠には山盛りのナスもどきの野菜が入っている。
家には岩塩を砕いた物はあるが、それ以外の調味料が無いので基本塩オンリーだ。
塩漬けにしてもいいが調味料が乏しいのが難しい、レパートリーが限られてくる。
「これってなんの野菜だろう?」
まず第一にこのナスもどきの名前を知らない。
この世界は娯楽といった類は少ないが、料理関係の本は結構存在する。
どうもこの世界の上流階級は、美食や珍味といった物に熱があるようで、前世にもあったように◯◯料理と言った感じで国の風土によって様々な料理が存在しているようだ。
ポプカ
今回取れた野菜の名前だ。
写実的な絵で、太郎の頭の上にある籠に入った野菜とそっくりだ。
【ポプカ】
・サンレーア地方を中心に栽培されている一年草、収穫する季節によって味や食感が変わり、春や夏は水分を多く含み、秋は身が引き締まってポプカ本来の味が味わえる、サンレーア王国では年中食される野菜であり多くの料理に使われる。
野菜図鑑の中には春収穫されたポプカと秋に収穫された二種類のポプカのイラストが描かれていた。
春はまんまナスのような形をしており、秋はキュウリのように引き締まっている。
そして今回収穫したポプカはナスの形をしているので春ポプカは漬物や汁物の一品として食べられるようだ。
「漬物か」
調味料が乏しいのがネックだ。やはり街へ出向いて調味料だけでも入手しに行くべきか?
ただポプカを縦に切って素焼きにして食べても美味しいようだ。
そうと分かれば早速試してみよう
家に戻り、囲炉裏に火を入れ金網を敷く。
地味に網のセッティングが難しいが、どうにか苦労しつつも平行にセットすることに成功する。
では早速・・・・・・
うん、美味い。
ナスやキュウリみたいな見た目だったから味気がないかと思えば結構風味豊かな味わいだ。
塩があってもいいけど、そのまま食べても美味しい
ただなぁ・・・・・・
「太郎、これどうする?」
「わぅ?」
部屋には大量に積み上げられたポプカが。
太郎はポプカをお気に召さなかったようで、先日狩ってきた巨大イノシシの骨を齧っていた。
うーん、処理に困る。
生野菜だからあんまり保存も効かなそうだし。
どうしようか?
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