第7話 道具入手

「うわぁ・・・・・・」


 出来れば新品の釘や道具が欲しいなぁ、なんて思いながら貴重な薬草を袋に入れ、村があった場所まで来た。


 そう、


「台風が過ぎた後みたい」


 俺の生まれ故郷であった村は殆どが倒壊しており、村の中心にある一際大きな村長の家もボロボロになっていた。


 これは酷い。


 嵐があったのだろうか?人の気配もなく、家財も無い事を見れば村が移転した可能性もある。


 畑だった場所も雑草が生え広がり居なくなってから結構時間が経っているように感じる。


「うーん、コレは予想外」


 もしかしたら村に入れない、ということは考えては居たけど村が無くなっているとは思いもしなかった。


 確かに村にいた頃の生活は苦しかったし、雪の季節では毎年のように人が亡くなっていたので移住は当然かな?


 ただ幸運だったのは村の倉庫に種籾が保存されていたことだろうか。


 他にもノコギリや鍬、金槌といった道具も幾つか残っていた。


 家財を運ぶだけで倉庫にある道具までは運べなかったのかもしれない。


 ありがたく拝借していこう、見た感じ戻ってくる様子も無さそうだし。


 他にも錆びては居るが、村の鍛冶師の家にはナイフや斧なども見つけた。


 一緒に大量の砥石も見つけたのでこれも持ち帰ろう。


 使えそうな物を村の広場だった場所に集めたら結構な量になった。


 ただ一回じゃ全部は運べないな・・・・・・


 太郎、何度も往復するけど大丈夫?


「ワン!」


 任せろ!と言った様子で元気に返事をしてくれるので大丈夫そうだった。








「おし、やるか」


 村は無くなっては居たが、探してみれば使えそうな道具が結構な量があった。そしてその中には、当初の目的の一つだった釘といった部品も幾つか置いてあった。


 当分は困らないだろうが、どの道作ることが出来ないので自力で制作するか、街まで出向く必要があるかもしれない。


「でも、街の場所知らないしなぁ」


 村でも比較的若く体力のある男性が、1年に何度か近くの街に出かけて買い出しに行くのは目にしたことがある。


 他にも行商人が定期的に街と村を行き来するので、それに合わせて余った作物などと物々交換をしていた。


 遠出にはなるだろうが、街といった人里があるのは間違いないはず。


 もしかしたらそちらへ村の人達も街へ移住したかもしれないし


 流石にププ草とか持っていくと騒ぎになってしまう恐れがあるので、もし機会があれば森で狩った動物のなめし革とかを持っていって交流を図ってみても良いかもしれない。


 そう思えば幾分気持ちが楽になった。


 流石にこの世界で孤独だったら辛いしね。


 気を取り直して、建物の補修なのだがこれは我ながら上手く言ったと思う。


 といっても板の張替えが殆どなのでそう難しいことじゃない。


 ただ力加減を間違えて鉄釘を曲げてしまったり、加工した木材が割れてしまったりというミスは幾つかあった。


「ん?どうした太郎?」


 雨漏りがしないように天井の板を張り替えていたら、家の中で見学していた太郎が鼻を使って俺のふとももを突いてきた。


 甘えたいのかな?いや、そういうわけじゃ無さそう。


 なんだろう?と考えていると太郎は木の板を持っていた。


 円形の滑らかに加工されたフリスビーのような物。


 まんまフリスビーだ・・・・・・


「お前が作ったの?」

「わん!」


 そうだよ!って言った気がするが狼に木の加工なんて出来るもんなのか?


 さわり心地もいいし、いつの間に加工したんだろうか?


本当に太郎が作ったのなら、俺よりも器用だ。


「とってこーーーい!」


 謎は深まるばかりだが、太郎お手製のフリスビーを屋根の上から投げれば放物線を描いて結構な距離を飛んでいく


 うお、すげぇ・・・・・・


 飛んでいったフリスビーに向かって一歩で数メートルを飛び、周囲の木々足場にして飛び越えてフリスビーを追いかけていった。


 凄い運動能力だ。


 まさにニンジャウルフって感じ。


 音も全然しなかったしね。


 数秒もすれば満足そうにフリスビーを咥えた太郎が戻ってきた。


太郎の目はもう1回やって!とキラキラと眩いばかりの目がこちらに向いてくる。


 いや、今日のうちに天井の補修終わらせたいんだけど。


 ・・・・・・やれ?まぁ投げるぐらいならいいけど。


 そうやって俺は何度もフリスビーを森の中へ投げ込むのであった。










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