第6話 家の改築

 長い間眠っていたせいで、あらゆる家具が時間経過によって経年劣化を起こし、ほとんどを作り直す羽目になった。


 特に建物に関しては素人大工で工事を行ったので、強風が吹くとギシギシと軋んで少し怖い。


 今は大丈夫でも、大雨や大雪で倒壊してしまったら目も当てられない。


 なので補強することにする。


 一から作れるほど技量が無いのもあるけど


 ボキッ!


「おー、簡単にへし折れるな」


 この体になって、どうも身体能力が向上したようだ。


 太い枝は勿論、若木ぐらいのそこまで成長していない木であれば腕の力で引っこ抜く事ができた。


 気分はスーパーマン。


 一方太郎は木を運ぶ俺の周囲を警戒してくれていた。


 ただ太郎は身体が大きくなったことにより、その威厳も増して周囲を徘徊するモンスターは全然居ない。


 狛犬やシーサーみたいな魔除けになってくれている。


 これなら獣害で断念した家庭菜園も挑戦しても良いかもしれない。


 夢が広がる。


 そう思いに馳せながら、伸びていた枝を折り、簡単に加工した丸太を両肩に乗せて運ぶ。


 太郎も口に一本の木を咥えて後ろから従いて来てくれる。


 太郎は凄く賢い。


 喋らなくてもやって欲しいことをやってくれる有能犬だ。


 太郎の場合は狼だから有能狼かな?


 何にせよ拠点に向かって丸太を持っていく。


 やることはそう難しくない。


 朽ちた材木を新しいものに取り替えるだけだ。


 あとは少し雨漏りもするので屋根の補強もやっておこ。う


 狩人が建てた建物は小さいながらもしっかりとした作りになっている。


 木材を骨組みに、石造りの家になって暖炉も完備している。


 一方俺が作った小屋は隙間風は勿論、雨漏りも多い。


 これが経験の差か・・・・・・


 幾らチートを持っていようとも使い方がなってないと宝の持ち腐れだということを、痛いほど思い知らされる。


 なので下手に奇をてらうことはせず。現状老朽化している部品を取り替える作業をするだけだ。


「あ、釘・・・・・・」


 木のつなぎ目には鉄で作られた釘が打たれている。


 コレばかりは鍛冶仕事になるので一日でどうにかなるレベルではない。


 やはりというか、丁寧に釘を抜いたとしても雨風に晒されて錆びてボロボロになっている物も多い。


 どうしようか・・・・・・


 一応釘を使わない建築法もあるのは知っているし、建て方も調べれば出てくるだろう。


 ただそこには匠の技と長年の経験、そして緻密な計算が必要になってくる。


 下手すれば釘を作るために鍛冶の研究をしたほうが早いまでありそうだ。


「村に行ってみるか?」


 村の位置は今も分かる。


 今でこそ森の奥地で住んで入るが、この森を出て川を伝っていけば生まれ故郷の村が存在する。


 別人みたいな姿になっているのでワンチャン入れるか?


 ただ微かに残る記憶でも、村の人達は排他的だった気がするので無理な気もする。


 ただこのままだと錆びた釘を再利用する羽目になるし・・・・・・


 一応反応だけ見て無理そうなら帰ってこよう、そう思い数年ぶりに村へ行くことに決めた。


 ん?背中に乗れって?


 太郎が目の前に出ると俺の背中に乗れと言った様子で金色の瞳がこちらへ向く。


 ではお言葉に甘えて・・・・・・


「おぉ!?」


 幾ら身体が小さくても厳しいか?なんて思ったけどそれは全くの杞憂といった感じだ。


 俺を背中に乗せた太郎はぐんぐんと加速していき、不規則な地形であっても流れる様に駆け抜けていく。


 乗馬の経験がない俺でも振り落とされない程には快適だ。




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