第5話 用法、用量にはご注意を
「コレが出来上がった薬?」
出火した薬草が入ったすり鉢を冷凍庫から取り出してみると、無事火は消えていた。
そして出来上がった?薬を見てみると・・・・・・
なんだこれ?チョ◯ボール?
すり鉢の中には何故か球体状に固まっている調合した薬の残骸が入っていた。
臭いは・・・・・・しない、完全な無臭だ。
「これ飲み込むの?」
チートボディでは生半可な毒では死なないものの、下手な毒よりも危なそうな薬みたいな物。
ただ効果を確かめてみないと肝心なときに使えないし・・・・・・
制作過程ではあれほど強烈な臭いを発し、挙げ句の果てには燃えた劇物が無味無臭となれば逆に怖い。
ゴクリ。
「えーい、ままよ!!」
念のため気絶したときのことを考え、家の中で飲み込むことにした。
未だ周囲には強烈な臭気が漂っているので、嗅覚に優れた太郎は帰ってくる様子はない。
うん、大丈夫そう。
舌で触れた感覚では特に問題はない。
一瞬わさびのような風味が口の中を抜けたが、我慢できないほどでもない。
そして完全に飲み込んでみたが痺れや痒みといった現象は起こっていない。
だいじょ―――――――――――――――
「あれ?太郎大きくなった?」
目が覚めた瞬間、俺は気を失っていたことに気がついた。
やはりあれは劇薬だったか・・・・・・。
今後はあんな過ちを起こさないと、心に誓いつつ周囲を見渡してみれば我が家が少し年季が経ったように朽ちた感じがした。
・・・・・・どれぐらい気絶していたんだろう?
ふと、そんな事を思ったが知るのが怖い。
俺が起きたことに気がついてやって来たのは大きくなった太郎。
いや、本当にでっかくなっている。
どれだけ気絶していたんだ俺!?
チワワサイズのもこもこ白毛の太郎が、シェパードぐらいの大型犬レベルまで大きくなっていた。
というか太郎、お前狼だったんか。
あのもこもこは冬毛だったのだろうか、近づいてきても相変わらずペロリストな太郎を撫でるとサラッとしつつも硬い毛の感触が手に伝わる。
うん、太郎は大きくなっても可愛い。
ただなんとなく見た目がも◯のけ姫に出てくる大狼に似ていて若干怖い。
太郎は白というより銀の毛並みなんだけど。
ぐうぅ。
そんな事を考えていたらお腹がなった。
「太郎、飯にするか」
「わん!」
「おいおい、髪の毛が白くなってんぞ」
どうやら俺は年単位で気絶していたようで、干し肉やその他保存の効く食料は全滅していた。
ただ身体が大きくなったことによって強くなった太郎が気がついたら周囲を歩いていた鹿を仕留めて持ってきてくれた。
えらいぞ太郎。
取り敢えず今は腹を満たす事を優先して、川に水を汲みに行けば反射した水面には真っ白な髪をした俺の姿が。
「うーん、悪魔の子って感じ」
以前の俺は、天パの焦げ茶色の髪をしていた。
微かに残る記憶の中では他の村人達と対して変わらない顔立ちだったと思う。
現在はそんな天パもサラサラな癖の無いストレートに。
髪の毛も綺麗な白色をしていた。
なんとなく太郎と隣に立つと絵になる気がした。
なんかラノベの主人公顔になったって感じ。
目も鮮血じみた明るい赤色。
肌も病人みたいな真っ白だ。
その姿は、かつて俺を村から追放処分を下してきたあのクソ爺が言っていた悪魔の子、と言われても反論できない見た目になっていた。
・・・・・・あの薬、本当に大丈夫だったんだろうか?
多分だけど、俺は年単位で気絶していて、その気を失っている間に色々と身体の作り自体が変わっているっぽい。
調合したププ草は、遥か昔から若返りの薬や不老不死の薬の原料になると言われているので、そこら辺が作用したのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます