椿

 少年は椿の植え込みの前に立っていた。

 ちらちらと時計を気にしている。私は彼の美貌に興味を覚えて、彼の様子を伺っていた。彼に一人の男が近づいた。彼は自信ある足取りで少年に近づくと、気さくげに肩に手を置いて、二人は歩きだした。私はその様子を最後まで見守れなかった。私は二人を追って走り出した。

「父さん!」

 父親は振り返った。私を見て驚愕に目を見開いた。私は彼の頬を引っ叩かなくてはならなかったろう。でも、私はそれをしなかった。なぜなら、自分の血の中に、父がいるとはっきり気づいてしまったからだ。その代わり、私は少年の手を取った。

「こんな親父をやめて、僕にしませんか」

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