第50話 マーリンの日常


 「……もう、朝なのね…この施設の欠点は時間の感覚が鈍くなる所ね…」


 [そうですね、マスターに相談しておきますか?]

 「…いや、エリックさんがそこまで考えない訳がないから…何か理由が在るのかも?」

 […マスターですからね…でも理由くらいは確認しますね?]

 「…そうね…気になるし…お願い出来るかしら?」

 (今日は最終仕上げの日にして…試練の塔へ籠るわよ…)

 「…そろそろ準備をして食堂へ向かうかしら…この部屋も今日で最後ね…少し感慨深いわね…」


 片付けや準備を終わらせて食堂へ向かったマーリンは最後に部屋へ向かって一礼をした


 「さて、ティアは…まぁまだ来てないわね(笑)」

 [ティアさんですから]

 「そうね~あら?花から良い香りね~どんな方法で作ってるのかしら?」

 [これはですね、マスターが私の為に考えて頂いた物でして、作りは周りとの温度を変化させて風を発生させて全体に香りを回して、更には花の品質管理も出来る様に調節したゲージで]「ナビ?落ち着いて?凄いのは解るから」

 […すみません、興奮してました…ティアさんが今起床しましたのでもう少しで来ると思います]

 

 「まぁ、興奮するわよね~私もこの指輪を揃えた時はもう眠れなかったわ…さて、座って待ってますか」(それにしてもエリックさんに全然会えてないな~何をやってるのかしら…ナビは知らないの?)

 「…まぁエリックさんの事だけは教えてくれないのよね~まぁ良いわ、ナビ?新しい魔法の形を記した物は確認したのかしら?」

 [マスターへはまだ確認を取ってませんが手が空き次第確認して貰います]

 「お願いね?あら?ティアが来たわね~」


 「ごめんね~待たせた?」

 「…まぁティアが遅れるのは何時もの事だから怒りはしないけど…だらしないわよ?」(少しずつ良くなってるしね?)

 「…ごめんなさい…どうしても朝は弱くて~」

 「まぁ仕方がないわね~ほら、ご飯にするわよ?」

 「は~い、ナビ?今日のオススメでお願いしますね?」

 「私も同じものでよろしく」

 [了解です、少々お待ち下さい]


 「所でどうなの?そろそろクリア出来そう?」

 「そうですね~そろそろだとは思いますけど~何でしょうかね~何かが足りないような~マーリンさんは?行けそうですか?」

 「私はそろそろ挑戦するわよ?少なくともこの施設は今日で終わりね~次からは試練の塔へ籠るわよ?」(少しでも先に行かないと直ぐに追い付かれるから…)


 「お待たせ致しました、和食定食がマーリンで洋食定食がティア分に成ります、ゆっくりお召し上がりくださいね?」

 朝食を置いて立ち去ろうとするエリックに慌てて声を掛けるマーリンとティア

 「!?なんで??」「エリックさん!久しぶりなのですから一緒に食べましょうよ~」

 「あ~ティアには悪いんだけど俺はもう食べたからさ~流石にご飯は食べれないよ(笑)ナビ?コーヒーを一杯貰えるかな?」[お待たせ致しました、コーヒーです]「お?速いな~ありがとう」

 「いやいや、速すぎでしょ!」[マスターの要望を先に準備出来るからパートナーなのですよ?]

 「……く…正論…」(ナビはナビでパートナーとしての性能が高いし…悔しいわ…)


 エリックと現在の状況を報告しながら食事を終えたマーリンは何時もの場所へ向かった


 「…エリックさんも何かやってるみたいだし、ティアは相変わらずだし…やっぱり私が一番遅れているわね…」

 [マーリンさんも凄いですよ?魔法書なんて素晴らしい発明ですよ?これからは他の方への指導の効率がかなり良くなりました]

 「お世辞でも嬉しいわ、ありがとうね?」

 […お世辞では無いのですが…まぁマスターもそうですけど仕方がない人達ですね…]


 「そんな事より魔法書も出来たし此処でのトレーニングも終ったし…片付けもしたし…そろそろ試練の塔に行こうかしら?」

 [そうですね、では行きますか]


 部屋の片付けを終わらせたマーリンは最終確認をしてから施設を出ました


 「さて、忘れ物もないし試練の塔へ行きますかね?それにしても色々と学びの多い環境だったわ」

 [マーリンさんは頑張りましたからね、初めの頃は弱かったのに…]

 「今も弱いわよ?何時まで経ってもエリックさんの足元にも及ばない…ティアだって…」

 [マーリンさんも凄いですよ?自信を持って下さい!その為にも試練の塔をクリアしないとですね?]

 「…そうね…あのゴーレムを倒せたら…少しは自信を持てるかな?」

 [はい、向かいましょう]


 試練の塔へ向かったマーリンは一度荷物の整理をする為に売店に向かった


 「失礼しますよ?携帯食料と新しい装備を見せて貰えますか?」

 [はい、携帯食料はメニューから選んでお金を入れて下さい]

 「あら?何かしらこの武器付与?説明して貰えるかしら?」

 [はい、マスターが新しく開発した技術でしてー既存の武器に付与魔法で新しい力を付けれます]

 「…それは凄いわね…私の指輪にはどんな効果を足せるのかしら?」

 [マーリンさんの指輪は既にかなりの付与が付いていますので…付けられるのは物理攻撃アップか魔力攻撃アップのどちらかですねー料金は金貨十枚ですー]

 「お金は有るけど…付けれるのはどちらかなのよね?」

 [そうですねーどちらかですねーどうしますか?マスターが開発した物ですから効果は保証しますよ?]

 (…私に足りないのは物理…メインの力が魔力…少ないのを足すか多いのを足すか…私なら…)

 「携帯食料と魔力攻撃アップ付与をお願いね?」

 [毎度ありがとうございますーでは指輪とお金を入れて貰えますか?]


 「……これで良いかしら?」金貨と指輪を投入口に入れたマーリン

 (エリックさんの施設じゃなかったら信用出来ないわね…)

 [了解ですーではでは、少々お待ち下さいね?]

 「お願いね?」


 しばらく店の中を見て回ってたマーリンにナビからお知らせが入った

 [お待たせ致しましたー指輪への付与が完了致しましたー]

 「思った以上に速いわね…流石エリックさんかしら?」

 [マスターの技術は最高ですのでー此方に成りますーお受け取り下さい]

 「これが新しい力…早く試して見たいわね…ありがとう大事にするわ」


 準備を終えたマーリンは売店から施設の入り口に向かった


 [何階から攻略しますか?]

 「…そうね最初の練習フロアは飛ばして十一階から始めるわ」

 [よろしいのですか?一応九十階から始めれますが…]

 「まだゴーレムには勝てる気がしないのよ…少し鍛えながら向かいたいから…」

 [了解致しました、では頑張って下さい]

 (…頑張るわよ、エリックさんに少しでも追い付く為にも…)


 小さな決意を胸にマーリンは試練の塔へ入って行ったのだった

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