第22話 偽りの勇者フリス②

 ゴブリンを食べ終えたフリスは馬車に乗り込み再度目的の町に向かい始めた

 (まったくゴブリンは不味いな~まだ口の中が臭いぞ…生臭いし腐ったみたいな風味だし…最悪だな…口の中が落ち着くまでは夜道を進むか…流石にこれじゃ寝れない…)

 

 少し馬車を走らせたフリスは周囲の安全を確認してから馬車を止めて仮眠の準備を始めた

 (この辺で仮眠を取って、少し明るくなってから町に向かうか…その方が安全だろうし、流石に疲れた…寝るか…)


 ~~早朝~~

 まだ薄暗い森の中、目を覚ましたフリスは馬の世話をしてから出発の準備に掛かった

 (良い馬だな…こんな環境でストレスが余り無いとは…さてと、早く町に行ってゆっくり美味い物を食べたい)


 ゆっくりと馬車を動かし始めたフリス、まだ薄暗い森の中をただ黙々と町に向かって突き進む


 (暇だな~まぁ魔物が出ないから良いのかな~今襲われたら面倒臭いからな~国王が居るし…)


 完全に日が昇り辺りが明るくなった頃、馬車のペースを上げ始めたフリス


 (よしよし、周りが明るくなったからペースを上げて…これなら昼前には目的地に着くかな~てか、この音でも起きないとか…俺よりも図太いな~まぁ起きたら五月蝿いから良いけど…)


 ~~昼前~~


 「おい!飯はまだか?ワシは腹が減ってるぞ!」

 (起きてからずっとこれだからな~五月蝿い…)「もうすぐ町だから我慢してくれ、俺だって腹が減ってるんだからな!」

 「勇者殿はあの臭い肉を食べれば良いだろ?ワシは無理じゃ!だから何か用意するのじゃ!」喚きだす国王

 「だから、もう着くから…あんまり騒ぐなよ…」(ここで捨ててくかな~マジで…)


 馬車が森を抜けると目の前には小さな町が見えて来た

 「ほら!もう町が見えて来たから、もうすぐ飯だ!」(やっと着いた~流石に疲れた…国王は五月蝿いし腹は減ってるしゴブリンは不味いし…もう、最悪な旅だったよ)

 「お~やっとかワシはまず飯を食いたいぞ!飯処へ行くぞ!」前の方に出て来た国王が騒ぐ

 「分かったよ、五月蝿いから落ち着け、今から向かうからよ」


 町の入り口に着いたフリスは一度馬車を止めて入り口の人に声を掛けた


 「すみません、馬車を止めれる所は有りますか?無ければせめて馬の休める所を教えて貰えますか?」(この馬は良い馬だし頑張ったから労らないとな…今回の件が終わったら馬だけ貰えないかな~?)

 「お?旅人かい?こんな田舎に珍しいね~馬車なら真っ直ぐ行った所に飯屋が有るからそこに繋げれるぞ?」

 「ありがとうございます、行って見ますね?」馬車を動かし教えて貰った飯屋に向かった

 「勇者殿?何故町の者に低姿勢なのだ?勇者とは偉い者なのだぞ?」

 「?何で?そう言えばそうだな…何でだろう…?町の人には優しく接すると得をするって誰からか教わって…?誰だったかな…?昔の事だから分からん!まぁ気にするなよ、もう着いたぞ」馬車から降りたフリスは馬が逃げないように固定した

 「ほら、先に行くからな」国王を置いて先に入ったフリス

 「待つのじゃ~ワシを置いて行くな~」急いで付いて行く国王


 「やってるかい?」カウンターに腰掛けたフリスは厨房に声を掛けた

 「いらっしゃい!やってるよ、メニューは壁に書いてるから見てくれよ?」

 「まったく、先に行きおって…で?何が食べれるのじゃ?」フリスの隣に座った国王

 「あ?壁に書いてるから好きな物を頼めば良いぞ?」壁を見ながら返事をするフリス

 「ほぅ?そうなのか、ならワシはオーク肉のステーキで頼むぞ(笑)」「はい、ありがとうございます今から焼きますので少々お待ちくださ」答える店員

 「俺はそうだな…唐揚げ定食の大盛りで頼むわ」

「はい、ありがとうございます順番に仕上げますので少々お待ちください」


 「ところで…国王は所持金はいくらだ?俺は持ち合わせが無いから頼むぞ?」小声で話すフリス

 「?ワシは金を持ち歩いて居ないぞ?」

 「はぁ?どうするんだよ!?ここの会計は?」

 「お待たせ致しました~ステーキと唐揚げ定食です~ごゆっくりどうぞ~」店員が頼んだ物を置いていった

 「まぁ取り敢えず食べるぞ?」食べ始める国王

 「あぁ、そうだな…折角作った物を残すのは駄目だしな…金は…後で考えるか…」食べ始めるフリス

 「ちなみに会計はいくらだ?」

 「お会計は銅板二枚です~あ!お会計は帰りで良いですので~ゆっくり食べて下さいね?(笑)」笑いながら答える店員

 「おう、ありがとな」(どうするかな~金が無いからな~国王の名前でツケに出来ないかな…)


 食事を終えた二人は店員に状況を説明した

 「ふ~旨かったぞ~」腹をさすりながら満足そうな国王

 「ご馳走さん、旨かったよ」(いや~久しぶりのまともな飯だったな~旨かった…さて金が無いからな~)

 「それでは~お会計になりますが~銅板二枚です~お願いしますね?」


 「あ~金なんだが…今は持ち合わせが無いんだよ…」「はい?」「だから、金が無いんだよ!」大声で叫ぶフリス

 「あぁ?無銭飲食だぁ?」厨房から顔を出すマスター

 (良い体格だな…顔も強面だし…)「いや、そうではなくて~持ち合わせが無いだけで支払いたいんだよ?ただ…金が無くてな?」

 「あ?同じ事だろ?」「違う、後で払うから今は見逃してくれないか?ツケに出来ないかな?」

 「何処の誰かも分からんのにツケに出来る訳が無いだろ?」睨みを効かせるマスター

 「何を言いおる!ワシは国王だし此方は勇者殿じゃぞ?御主は知らんのか?」怒鳴る国王

 「知らん!見た事が無いから分からん!俺はわざわざ城まで行った事も無いしな」はっきりと言い切るマスター

 「そうか…知らなかったか……そうだ!俺がキングオーガを討伐するのは知らないか?確かキングオーガが目撃されて困って居たんだろ?それを討伐しに来たんだよ」(これで知らなかったらどうにも出来ないな…)

 「あ~その話なら聞いた事が有るぞ?そうか、討伐に来たのか~でもそれとこれは別の話だろ?」

 「いや、その討伐報酬で支払うからさ~今回は見逃してくれないか?割り増しで払うからさ?」(何とかこれで…ダメなら逃げるかな~国王置いて…)


 「良いんじゃないですか~?銅板二枚位ですし~討伐報酬で割り増しでくれるらしいですよ~?」間に立つ店員

 「うん?まぁお前が良いなら良いけど…良いのか?逃げるかもだぞ?」問い掛けるマスター

 「まぁその時はその時で何とか成りますよ?(笑)」

 「よし、なら今回はツケにしてやるが、もし逃げるような事が有ったら…許さないからな?覚悟はしておけよ?」念を押すマスター

 「良かったですね~(笑)許して貰えて~だけど基本的にお金が無いのにご飯は食べたらダメですからね?」笑って注意する店員

 「ありがとう助かったよ、次は金を持って来るからな?その時はよろしく頼むぞ?すまなかった、ではありがとう」足早に店から出たフリス

 「待つのじゃ~では、さらばじゃ、旨かったぞ」追い掛けて付いて行く国王

 「何だったんだあれ…」「さぁ~何でしょうね~(笑)」

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