14
「おい、スズ坊? お前、大丈夫か?」
「え……? うわっ、なんすか!」
そこは、ガヤガヤとしたファミレスだった。
祈は自分の肩を揺する大きな手と、眉間のシワをくっきりはっきり刻んだ強面男のアップに驚いて仰け反る。
「それはこっちのセリフだ、馬鹿野郎。お前、飯食ってる最中、急に動かなくなって……したら寝てやがるから、驚いたぞ」
「……寝てた?」
「ああ。ぐーすか、よだれ垂らして」
マジかと祈が口の周りをこすると、笹ヶ峰は冗談だと呆れた声で言った。
「あれ、獏間さんは?」
「電話」
「ん? 仕事の依頼とか?」
「どうだろうな。それより、お前は大丈夫なのか? 気分悪いとかねぇのか」
「あ、ないっす」
「ならいいけどよ」
「俺、そんな長く寝てました」
「いや、獏間が電話かかってきて席を離れた直後だから……数分だ」
そうかと呟いて、祈は思った。
あれは、夢だったのかと。
「……笹ヶ峰さん」
「あ?」
「オカルト刑事の意見を伺いたいんすけど」
「その呼び方はやめろ……――で、なんだよ?」
「……呪いって、悪意からじゃなくても生まれるんっすかね?」
僅かに笹ヶ峰が目を見開く。
「恐怖心から、呪いは生まれるものっすか?」
「……坊主、お前急にどうした」
「別に急じゃねぇっす……だって、妹が――」
あんなに怯えていた。
巫女と呼ばれていて、名前も忘れていた。
あんな風に、酷く恐ろしい目にあって……。
(あれ? 俺、なんでそんなこと知ってるんだ?)
考えていて疑問に思う。
だけど、頭に霞がかかったようにどこか、ぼーっとしている。
「……スズ坊?」
「あ、いや、とにかく妹がすげー怖がって……」
「妹って……。お前に、妹なんていないだろ?」
しっかりしろと肩を揺すられ、祈ははっとした。
「……そう、だ。俺には、妹なんていない。あれ、なんで……そんなこと……」
「――待ってろ、獏間を……いや、それよりアイツ回収して帰るか」
「え、飯は? もう、いいんすか?」
「馬鹿か。青い顔してガタガタ震えて、なに言ってやがる」
言われて、祈は自分が初めて震えている事に気付いた。
それを誤魔化すように、立ち上がる笹ヶ峰に合わせて、立ち上がろうとして、くらりと視界が暗転し――。
+++
兄ちゃん。
――呼ばれている。
「あ、起きた」
まんまるの目が、にっこりと笑みの形に細められる。
「兄ちゃん、はやく行こう」
小さな手が伸びてきて、はやくはやくと急かすように引っ張られる。
「ほら、兄ちゃん。はやく――」
に げ な い と
――パチン。
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