第2話 人生迷子編
地図を見ると境内に入る前に、二の鳥居をくぐってから長い一本道を歩き、
ようやく「三の鳥居」にたどり着く。
実際に通ってみると、一本道の途中には各月に合わせて詠んだ句や、
人々が訪れるようになった歴史が記されていた。
千と千尋の神隠しでトンネルをくぐって神様の世界へ入っていくような、
自分が今までいた次元の世界とは別の場所へ踏み込むような、
神妙な心持ちで一人、道を歩く。
まるでお母さんの産道を通って命が生まれてくるような不思議な雰囲気だった。
そしてその歴史が記された看板を見て、この神社に祀られている全ての神様に
ご挨拶をして行こう!となんとも礼儀正しいことを考えていた。
しかし、心は戦闘態勢。
この神社の下調べをしたところ、境内には数々のお社があり、
全ての神様に順序良く参拝するには絶対に迷子になる確信があった。
後になって知ったことだが、この神社のおみくじには
次に向かうべきお社が記されており、
本殿にお参りした後おみくじを引いて、
次のお社で参拝すればよい、というシステムだったらしい。
そんなことは露知らず、初参拝の礼儀として
私はこの日、全てのお社を回るつもりでいたのだ。
その為、まずは社務所に出向きパンフレットを貰うか、
スタッフの人にどんなルートで回るのが良いか聞いてみようと思った。
三の鳥居から左手に抜けると、すぐそばに社務所がある。
出向いた時間が10時頃、誰かしらいるだろう。
自動ドアが開いた時、私の目の前に飛び込んできたのは
白無垢姿の女性と「結婚式受付」の文字。
周りの正装姿の人たちはご家族だろうか。新郎はどこだ。
迷子になるまいと策を講じた結果、案の定迷子になってしまったのである。
幸い、場違いな私が突撃したことに気づいたのは、
受付のテーブルでお客様を待っているであろう係の人だけだった。
白髪のおじ様が目を丸くしている。
「あ、なんか間違えたっぽい☆(てへぺろ)」
とりあえず早急にその場を去るべきだと悟った私は、
何事もなかったかのようにしれっと外へ出た。
三の鳥居に戻って来た時になって、私は二つ後悔した。
「おめでとうの一言くらい言ってから出てくればよかったじゃないか・・・!」
「ていうか、パンフレットとか忘れたんだけど」
最早パニックも最高潮だったせいか、「神様にご挨拶」どころか
おめでたい席に突撃した挙句、人相手にご挨拶一つ出来なかったのである。
なんとも恥さらしな。
スピリチュアル氷川神社 さやこ @okayas
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