第18話 真相へ
この日、ブラントは朝早くからサンドラを連れて、ある人物のもとを訪れていた。
「やあ、今日もアイテム管理お疲れ様です――キースさん」
「えっ? あっ、あなたたちは遺失物管理所の……」
ふたりが訪ねたのは、グローブル分団で一番の下っ端であり、あの事件があった当時、荷台の管理を担当していたキースだった。
「今日はどうしたんですか?」
「いえ、例のぬいぐるみの持ち主が分かりましたので、そのご報告に」
「持ち主? あれはクリストフさんが持ち込んだ物では?」
「そうなんですけどね……あれ、実は違ったんですよ」
「ち、違った?」
わずかに顔が引きつるキース。
それをブラントは見逃さない。
さらにそこから畳みかけていく。
「あなた……俺がぬいぐるみの話をした時、こう言ったのを覚えていますか? ぬいぐるみが荷台にあったことに気づかなかった、と」
「え、えぇ、言いましたよ」
「どうしてぬいぐるみが荷台にあると知っていたんですか?」
「えっ? ――あっ」
決定的な表情の変化だった。
キースもさすがに気づいたようで、すぐに平静を装うがすでに遅い。
さらにブラントは続ける。
「あのぬいぐるみはあなたがクリストフの名前で購入した物ですね?」
「ち、違う! たまたまそこにあると思って口走っただけだ!」
「本当に?」
サンドラから疑いの眼差しを向けられ、キースの狼狽ぶりはさらに勢いを増す。
「う、疑うのなら、僕がクリストフさんの名前を語ってぬいぐるみを買ったという証拠でもあるんですか! デナンの町の人形屋の購入者リストに名前があったって聞きましたよ!」
「確かに、リストにはクリストフ・コーナーの名前がありました」
「だ、だったら、クリストフさんが購入した物で間違いないじゃないですか」
「それがですね……妙なことに、一致しなかったんですよ」
「な、何がですか?」
「魔紋ですよ」
「っ!?」
キースの表情はさらに青ざめていった。
もはや確定的と言っていい絶望顔だ。
「クリストフ・コーナーの魔紋と購入者の魔紋が一致しなかったので、念のために騎士団の中に購入者がいないか照合してもらったんですが……その結果、あの魔紋はあなたのもので間違いないという結果が出ました」
「うっ……」
追い詰められたキースへ、ブラントは事態の核心へ迫る言葉を放つ。
「あのぬいぐるみは、あなたの意志で購入したものではありませんね?」
「そ、それは……」
「観念したら? 昨夜、メルツァード商会の若い商人が身柄を拘束されたし、炙り出されるのは時間の問題よ」
「えっ?」
そんなバカな、と言わんばかりの表情を浮かべた後、キースはその場に膝からその場に崩れ落ちた。
「正直にすべてを吐いた方がいい。連中のことだから、下手をするとすべての罪を君にかぶせて知らぬ存ぜぬを貫き通すかもしれない」
「そうなったら、自主退団だけで済む問題じゃなくなるわね」
「そ、そんな……」
脱力するキースを尻目に、ブラントは手をあげて合図を送る。
すると、物陰に隠れていた騎士たちが続々と姿を現し、キースの身柄を拘束して牢屋へと連れていく。
――ただ、ここまでで分かったのはぬいぐるみを購入してあの荷台に仕込んだのがキースであることだけ。
なぜあのぬいぐるみを仕込んだのか。
そして、黒幕は誰なのか。
すべての謎を解くため、ブラントは再びアイゼンバーグのもとを訪れることにした。
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【
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是非、読んでみてください!
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