第15話 覗き見る男
大柄の男が振り下ろした剣を間一髪で回避する。
「くそっ!? 本気でヤル気か!?」
「あんたはいろいろと嗅ぎ回りすぎたんだよ。おかげでお偉いさんがカンカンだぜ?」
「お偉いさん……」
男の語る「お偉いさん」とは、一体どの組織を指しているのだろうか。
やはり、騎士団関係者だろうか。
真相を確認するよりも先に、目の前の問題を解決しなければならないとブラントは気持ちを切り替える。
相手は武器を手にした男六人。
対して、こちらは右腕がほとんど使えない状態。
当然、向こうもそれを分かっているからこその余裕あふれる態度だった。
「そろそろおしゃべりはしまいだ。あまり長引くと邪魔が入るかもしれねぇからな」
今度は斧を持ったスキンヘッドの男が襲いかかる。
それもかわすと、反撃とばかりにカウンターの蹴りを男の顔面へと叩き込んだ。
「ぶべらっ!?」
体を回転させながら吹っ飛んでいく斧使いの男。その光景に唖然としているうちに、ブラントは次の行動を開始。手近なふたりの男を一撃でダウンさせる。これで残りはもう半分となった。
「なっ!? ど、どうなってやがる!?」
「剣を持って戦うだけが騎士というわけじゃないってことさ」
あくまでも武器が破損したなどの緊急事態が起きた時の対処法であるため、常に使うわけではない――が、こういった事態に陥った時は本当に便利だ。
男たちも、ブラントの反撃が予想外だったのか動揺している。
このことから、ヤツらを雇っている黒幕は騎士団関係者でない可能性が高まった。バックについているのが騎士団なら、たとえブラントが剣を使えない状態であっても、格闘術に長けているという情報を与え、備えるはずだ。
しかし、連中にそのような素振りはなかった。
ということは、もっと別の組織が絡んでいるのか。
「――うん?」
戦闘中、ブラントは自分を見つめる視線に気づいて振り返る。
と、物陰からこちらの戦いをジッと監視している若い男を発見。目が合った瞬間、男はまずいと思ったのか、その場から逃げだす。
「今の……」
最後のひとりとなった大剣の男を側頭部への飛び蹴りで沈めると、ブラントは逃げだした男を追いかける。
その男は見覚えがあった。
昼間、教会でシスターを脅していた、メルツァード商会の商人だ。
となると、先ほどの男たちの雇い主はメルツァード商会ということになる。
ただ、ブラントにはどうにも分からなかった。
メルツァード商会がブラントを狙っている理由は、あのぬいぐるみに隠された真相を探っているからだと思われる。
だが、なぜメルツァード商会なのか。
商会とクリストフが裏でつながっているというのか。
――その答えは、
「答えてもらうぞ」
「うわっ!?」
逃げだした男を先回りし、見事捕獲に成功。
ブラントは夜の王都を巡回していた騎士に事の顛末を説明し、気絶している六人のチンピラとメルツァード商会の若い男を詰め所へと連行したのだった。
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