第2話 地獄を作ったよ

 まあ知的生命体を調理しないことを世間に信じてもらえそうもありません。というより結論が先に出ているものだから、話し合いにすらなりません。


 状態的に調理しないの前に、すでに調理できないですしね。


 口の中での調理は秘伝です。黙っとけ。


 大路にて群衆に対してスキルの地獄を根拠にして話すことができればよかったのですが、この世界では地獄は新概念なので罪の苦しみを私のせいにされたくなくて吹聴できません。


 まあ今のところ地獄てなにですし。まだ作っていないので私もそう思ってます。


 地獄を抑止力に禁忌を犯さないと信じてもらえたら手首と足首より先を再生してもらえないかと愚考するのですが、そこまで甘いとこではなさそうです。

 訴えは最後のきっかけとしてやらせていただきました。


 過去の人を足で調理スキル使わないといけないくらい働かせてからに。足首を切るってそういうことでしょ。


 さて、喉も枯れたし、また今日も裏道で誰かの喜捨を求めます。これでうまくいかなくて汚物生活で前の魂が亡くなっているからあれなんですけど。


 うまくいかないことの続きは虚しいですね。


 さて、せっかく生きてるからスキルを確かめるか。ござに座っているだけでもう何もやることがないもの。


 というか設定せずに死ぬとか、この体に申し訳ない。恨みでやることではないけどね。


 地獄の種類は、あ、自分で考えるの。餓死までにできるかな。この世界に慣れてなくて食欲はあまりないんだ。とりあえず、死んだら全員灼熱地獄でいいか。罪と罰とか教養はこの体の海馬にないし。


 地獄、スタート!


 死なないとわからないので世界は正常運行が続きます。さていじろう。灼熱っていうくらいだし、太陽くらい熱ければいいかな。





 何事も広報は大切です。地獄についてみんなに体験してもらうことにしました。


 一晩分だけ、罪のあるなし関係なく寝ている間の体験版です。


 一応開設にあたり今までの罪の分をほんの少し味わってもらうみたいなメッセージをつけました。かっこつけに。


 罪のない人ごめんな。子供は成人した日からにしたからさ。


 あとお恵みくれた人を少し軽くしたかったけど設定難しくて、一生無理だわごめんな。


 翌朝、自分を除外できなかったので嫌な目覚めでした。


 熱いって最悪だ。あれが何百年と続くとか、ほんと、人を調理した地獄に落ちたくないな。


 まあそんな規律を作んなきゃいいだけだけど、仲間にかじられ調理されたくないから規律がないと生きられない。


 いつか作る羽目になるんでしょう。

 そんなことより街の様子だ。石壁越しに叫びが外まで聞こえてくる。寒くて早朝に目覚めるけど、こんな騒がしい朝は初めてだ。カーニバルの日の朝よりひどい。


 心が弱ければ耳を塞ぐような事態だが、自分の不幸よりは幸せに生きている人たちの声なので無視できた。両手なくなって自分の叫びがうるさいのに耳をふさげなくなってから叫べ。


 私は絶叫の街を這い歩き、宗教施設の近くに陣取った。いつもは追い払われるが今日はそれどころではなくなるだろう。


 夜明けとともに人々が地獄と罪について訊ねてくる。


 宗教施設の職員もげっそりとした顔で当たり障りのないことをいっている。


 人は何かしないと不安になる。あがりがすごくいい。月一でやろう、これ。


 しかしなんかみんな火を怖がるようになっている。暖かいものがない。


 次にやるなら極寒地獄かな。賽の河原からスタートにしたほうがよかったかも。

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