調理スキルが禁止されてもしかたない

@euaa

第1話 交代したよ

 この世界には悲惨な歴史があった。神様から与えられるスキルの中に『調理』がある状態で戦争が起きたのだ。


 それは太古の昔からの話かもしれない。土地を争っていると生き物は腹が減るのだ。


 勝った。減った。腹を満たしたい、があるのは同族の遺体だけ。どれだけスキルで力が強くなろうと腹がぐーぐー。


 そんなときに調理スキルを持つ者がいたらどうだろう。

 省略すると、死ななくてもいい人々が最終的に亡くなることになる。占領という形が小さくなって。


 そんなことを何千年かやり、人が減り、多様性がなくなり、病に弱くなり、絶滅しそうになるがスキルでなんとかする。


 みんなスキルでがんばった。


 大国が安定を求め、宗教で倫理が進み、兵站の概念が重要視されるまでスキル頼りは進んだ。


 そう、我ら種族は神様から与えられたスキルが一部なくても大丈夫になったのだ。そしてその一部が禁忌となった。


 調理スキルが戦争に影響を与えすぎていたのだ。一騎当千の軍ならば大陸の端から端まで打通できるようになる。それが調理スキルの力だ。


 そんなめちゃくちゃパワーは安定求める大国や、当時からはじまった同族食いを禁忌とする世界観に見合わない。


 結果調理スキルを持つものはレシピだけ残して大半が退場することになった。


 これは、とても柔らかい表現です。




 さて、そんな世界ですが、このたび私は調理スキルを持って亡くなった魂と入れ替わるように転生することになりました。


 前世を思い出すパターンとは少し違います。

 ガチガチに迫害されたあとに交代して再開する人生です。


 海馬に残るのは生まれて予防拘禁と処理をされ、放り捨てられた8年間。

 手首足首なしの仲間はいて、口の中で生ゴミなどを調理できるよと教えられて生きてはいました。


 しかし食欲がなくなればどうしようもない。汚物を口に入れる前の嫌悪感はすさまじかった。口に入れば絶品とはいえね。


 体の持ち主はこの街の98周年カーニバルに出されたごちそうを最後に何も食べずに眠ってしまった。


 まあなんの因果か交代したのだから生きないと、と私は考えます。


 別に世界へ調理スキルを使って反逆とかはしません。貴族富豪生まれなら飢饉の予備にと生きていられるのにと思わなくもないですが。


 それよりすることがあります。知らんけどできるようになった地獄を作るスキルです。


 地獄は比喩でなく死後の本物です。


 やれってことでしょう。


 でもその前に世間に訴えます。


 私はこれからも人を調理しません。

 信じて!手足を戻して!そういうスキルも薬あるでしょう!


 私は大路へ向けて叫びました。

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