突然の告白
『今日は月が綺麗ですね。」
いきなり瑠那に言われて俺はドギマギしてしまう。
学校帰りの公園で俺と瑠那は並んでブランコに揺られながら、学校の事や将来の夢の事とか話していた。
そんな時、瑠那は空を見上げて突然言った。
『きっと深い意味など無いんだろう』
瑠那の顔を見ていて俺はそう感じた。
なんだか俺ばかりドキドキしているのが馬鹿馬鹿しくなった。
そして俺は綺麗な月を見ながら母から聴いた昔ばなしを瑠那に話し始めた。
「俺、生まれた時から親父が居なくて母さんに育てられたんだ。母さんに『なんで俺には父さんが居ないの? 』って聞いた事があるんだけど・・・」
「そうなんだ? 初めて聞いた。」
「そしたら母さん凄い事言ってきて、俺は呆れちゃたよ。」
「えっ、なんて言われたの? 」
「信じてもらえるか分からないけど・・・ 『アナタのお父さんは月からやって来たの。地球には一年だけの滞在でそして月に帰って行っちゃった! 』って言われたんだ。」
「ウソ? その話し・・・」
「かぐや姫の物語じゃないんだからそんな事あり得ないだろ? 」
俺は瑠那に呆れられるかと思った。
そしたら瑠那は真面目な顔して聞いてきた。
「それって・・・ 17年前なんだよね? 」
「ウン、俺の歳から計算するとそうなるよね。」
「翔に信じてもらえるかわからないけど・・・ 」
「ウン、何? 瑠那が言うことならどんな事でも信じるよ。」
「私、冬至に月からやって来たの。そして今度の冬至に月に帰って行く。17年前は私の父が地球に来ていた筈。」
「・・・? 何言ってるの? 」
俺は瑠那がひどく遠い存在に感じた。
本当の事なんだろうか?
でも、瑠那の顔は嘘を言ってる様には見えなかった。
「もしかしたら、私達は姉弟なのかもしれないね? 」
瑠那は俺の方を向いてニコッとした。
俺はブランコを降りて瑠那の前まで歩いて行くと瑠那の顔をジッと見つめた。
その目には不安そうな俺の顔が映っている。
今、自分の気持ちを伝えておかないともう次は無い様な気がした。
そして勝手に俺の口から言葉がこぼれる。
「俺、瑠那の事が好きだ。いつまでも瑠那と一緒に居たい。もっと瑠那の事いろいろ知りたい。」
瑠那は俺の言葉に少し困った様な顔をした。
「私も、翔の事は好きだよ。でも、私は月からの使者なの。月に帰ってしまったらもう翔とは逢えないわ。運命には逆らえない! 」
諦めの様な瑠那の言葉に俺は足掻いてみたくなった。
「ねぇ、二人でどこか遠くの世界に逃げちゃおうよ! あぁ~~ ドコデモドアがあったら二人っきりの世界に行けるのに! 」
現実には無いものを欲したところでそんなモノが手に入るはずなど全く無い。
それにそんなモノが現実にあったら誰でもお手軽に天国に行けてしまう。
俺も現実を見て諦めた方がいいのだろうか?
絶望を感じて項垂れていたら・・・
「そういえば・・・ 私が冬至の時に通って来たドアなんだけど、冬至の時は物理的に月と繋がるんだ。でも、それ以外の時も何処かに繋がってるって聞いたことがあるよ。それが果たして地獄なのか、天国なのかわからないけどね。」
「瑠那と一緒に居られるなら地獄でもいいぞ! 一緒にそのドアの向こうの世界に行こうよ。」
俺は瑠那にニコッと微笑みかけると、手を繋いだ。
そして『もうこの手を離さない』と心に誓った。
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